「付喪堂骨董店2―“不思議”取り扱います」

「ところで何でお前が俺のクラスの集合写真を持ってたんだ?」
「前に刻也がわたしに焼き増しを頼んだことがあったでしょ?そのとき一枚多く間違えたの」
「捨てればいいだろ?」
「写真を捨てるのは嫌いなの」
「お前が持ってても意味ないだろ?」
「いいから返して」
「そんなに俺の写真が欲しいなら他のをやるぞ」
「これでい……別にいらないわ」


あらすじ

『アンティーク』といっても年代物の骨董品や、古美術品ではない。ここでは幸運を呼ぶ石、未来の姿が映る鏡のような不思議な力が宿った器物を指す。『付喪堂骨董店〜FAKE〜』無愛想な少女が店番を勤める『アンティーク』の専門店。ただし売物はほとんど偽物。今日も店は閑古鳥が鳴いているが、奇妙な事件だけはほっといても舞い込んでくる。不思議な力を宿した『アンティーク』を求める人たちは後を絶たないのだ。誤った使い方がその身を滅ぼすとしても―


地味だけど…

2巻も1巻の型を受け継ぎ『アンティーク』を軸にした連作短編形式。
2巻のお題目は…

  • 『映し出す範囲の音を消す鏡』
  • 『自分と同じ能力の"もう一人の自分"を作り出せる仮面』
  • 『他者の見た物を見れる眼鏡』
  • 『対象の未来の写真を撮れるカメラ』

と、なっております。
基本的スタイルが『世にも奇妙な物語』チック、「便利な道具を手に入れたが調子にのって…」的展開で淡々と進むので文章表現のみだとどうにも地味な感じが。と、なるとお話自体が面白いかどうかという点が重要になってくるわけですが1巻のほうがオチ的には面白いお話が多かったかなーという印象。勿論共に4話目は例外
複線はあったもののそれでも結末が浮いていた鏡の話と、ただひたすらに欲望のままに突っ走って自滅した眼鏡の話が気に入らなかったらしい。個人的にはもう少し引っ掛けのある(皮肉な)お話の方が好きなようだ。
全体的に地味なだけに、それだけ面白い結末が印象に残るというもの。4話目が実質使えないとか、本筋を進行させる必要もあるとか、1冊につき4話がページ数的に限界だとか色々縛りはあるものの次巻以降も苦しんでお話を考え出して欲しい。頑張れ。これでも、応援してるから。


乙女心増量中

で、ストーリー的には地味で今ひとつだったような感じですが、ヒロインである黒色妄想暴走無愛想少女・舞野咲成分は絶賛増量中であったり。
一見クールで無愛想、だがその心中は誰よりも乙女な彼女。言動に時折垣間見える本音が、(一般常識に欠けている所があるため)妄想がエスカレートしていくその行動が大変に可愛らしい。
1巻でもいきなり1話でボクっ娘(百合?)に襲われそうになったり、病床に臥せってつい本音が…等要所要所で美味しい場面がありましたが、その実出番自体は少なかった。2巻はその鬱憤を晴らすがごとく出番が大増量ですよ!と、いうか1話2話はそんなに絡ませなくても展開に支障はきたさない気もするが、その状況の中敢てメイド服や制服で登場とは…わかっておる喃。
最早恒例となった感もあるラブコメ調の4話も健在。「黒いから」という理由で猫耳装備すら許可する彼女が写真撮影の服装に出した唯一の条件が「黒い服」でなかった辺り、もう…ね。かわいいよ咲かわいいよ。


お話は精彩に欠けたものの咲可愛さでだいぶ盛り返した感のあるこの2巻。今くらいのバランスならば、まだシリアスだと感じられるのでこのくらいがボーダーな気がするが…この作品の明日はどっちだ?無論4話は好き放題やっちゃってください。本筋の動向も気にしつつ次巻にも期待。
あ、店長のことも時々思いだしてあげてください…

4840238863付喪堂骨董店 2―“不思議”取り扱います (2)
御堂 彰彦
メディアワークス 2007-06