「レジンキャストミルク7」

「でもね」
「この子たちの友達は、この偽物の姫島の方なのよ」
「直川たちが選んだのは、直川たちを選んだのはあんたじゃない。この娘よ。偽物?上等ね。安物の紛い物?いいじゃない高価じゃなくて。コピー?だったら本物との差なんてない。模型?模型の方が一緒に気安く遊べるわ」
「私たちはことごとく偽物の世界で、だからこそ本物に取って代われる図々しさを持ってるの。だからね、鴛野在亜。その贋作に負けた程度のくだらない真作なんて、どっかの博物館の倉庫で大事に埃でもかぶってればいいのよ」
「それがわかったら……すっこんでなさい!」

本当は『絶対言語』使用後の台詞が良いのだけど壮絶にネタバレ気味なので自粛


あらすじ

全ての【虚軸】を消滅させて【実軸】である城島鏡への統合を図ろうとする城島樹。
彼らの企みを阻止するため、連れ去られた芹菜を奪還するため、晶達は反撃を開始する。無限回廊の元へ攻め込む晶と硝子。同時に彼らが不在で手薄になった学校に迫り来る無限回廊の新たな刺客。敗北は許されない二正面作戦、はたして彼らの運命は―


いつもの展開を踏襲しつつも…

ほのぼの×鬱な学園アクションノベル報本反始な第7弾
物語もクライマックスに至り色々と緊迫した状況下でありながらも、いつものように始まる巻頭カラー口絵の漫画とほのぼの展開、毒舌硝子。やけに開き直った語り口上や見せ場での虚界渦の開放、そして鬱展開とお話の構成要素自体はいつもと大差無い。
だが、同じ手法を用いつつも今巻はやけに面白かった…というか感情移入し易かった。これはあとがきに書いてある通りのことなのでしょうね。書くスタンスの変化。各登場人物が今回はやけに素直にそれぞれの信念に従って動いていたのですんなりと感情を飲み込めた。最初からこの方向で書いてれば、良くも悪くも作品の流れ自体が変わっていたのでこの書き方自体が素直に「良い」とは言えないと思うが、少なくとも7巻は面白かった。それで十分ではないかとも思う。個人的には前巻で妙な遠慮をみせ、仲間に対してやけに謙虚になってた晶君の変化が特に好印象。以前と同じく使える物は酷使しつつも打算だけでなく全幅の信頼をも寄せている辺りが素敵です。無限回廊とのやり取りでも感じられるように、やっと「吹っ切れた」感が。
要所で入るネガティブ展開は相変わらず。「みっちゃん」の件も「いいお話だなー」と思った直後、素直に奇跡ということにしておけばいいのにしっかり今後の展開に利用し樹に「殺す」と言わせてしまう辺り容赦ねぇ…いや、褒めてるよ?ほのぼの⇒シリアスの落差もいい具合に効いていて、持ち上げて落とす手腕は今回も冴え渡る。"電撃の黒い太陽"の二つ名は伊達では、ない。
と、いうわけで7巻は最近のレジンキャストの中でもレベルが高い巻であったと思う次第。既刊はその都度読んでたので以前の舞鶴・殊子姉妹のお話の内容を(自分が)半ば忘れてたのが悔やまれるが細かい所も記憶に残ってれば更に破壊力が増すことでしょう。そんなに巻数も多くないので一気通貫も良いかも(未読なら)。そして次が最終巻。…現状でどう転ぶかは予想つかないなぁ、何にせよ楽しみに待ってます。

■感想リンク■

4840238820レジンキャストミルク 7 (7)
藤原 祐
メディアワークス 2007-06