「魔女の生徒会長」

「悪魔なんか…いるわけない。魔法なんか、使えない。男の子が――無駄に死んだだけ……何の、意味もない」
「そうかもね」
「でも。捧げてしまったのだから」
「誰に何を言われても、女の子は魔女なの」
「魔女だから」
「魔女だから――人間よりも強いのよ。人間なんかに負けないのよ。誰よりも正しく強く美しく、人間たちの悩みも不幸も呪文ひとつで楽に解決!どれだけ強い人間でも、決して魔女は損なえない……そんな強い生き物に、魔女に、女の子はなった!」


あらすじ

『この学園では何をするのも自由だ。ただし生徒会長には逆らうな!』

それが、あらゆる生徒を受け入れる帝都世紀末学園に唯一存在する暗黙の不文律。


学園の秩序を問答無用で守り続ける自称『魔女』の生徒会長・剣シロオ。
ある日、シロオと生徒会一行は、学園の中でも最も治安が良い『A校舎』でその場にそぐわぬ事件に遭遇する。隻眼隻腕の少女に切りかかる小太刀の女と、その少女を守る長刀の男。いつものごとく喧嘩両成敗で万事解決―だったはずなのだが。
当事者である少女は語る―

「これで、いいのに。みんな、これで、いいのに。苛められて……当然で、ううん、苛められ……たいのに。なんで――邪魔するのォ?」


生徒会による学内での全紛争行為への武力介入を開始する

また、学校か。
これだけ毎回、学校という要素が大きい作品を書き続ける作家も珍しい。結構多作なのに…って狂乱家族くらいか、学校要素が控えめなの。対象読者とか書き易さを考慮すると学校モノが多くなってくるのは理解できるが、それでもここまで続くと嗜好的な物も感じる。他の作品のあとがきでも書いてたように、学校に対して執念やら怨念やら色々思うところがあったってのも納得…かも。毎回毎回微妙に毒が入ってるあたり。
と、いうわけで痛快娯楽勧善懲悪アクション小説な今作もそんなに素直な学園モノではなかったりするのでした。本文の最初が「俺は学校が嫌いだ」だし。それでこそ、だとも思うけど。


読んでみて。
これまた日日日らしく、まずキャラありき、な感じ。他の生徒会メンバーの描写が喰い足りない気がするが、その分シロオたんのキャラ立ちは異常。

「一度でも嘘を吐いた子はぁッ……いずれまた嘘を吐くのよ!信じない!もう信じない!許す?ダメ!蹴らない?ダメ!ダぁ――――ッメ!蹴るぅ!蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴るぅぅうウウッ!」

強く、凛々しく、病んでるってなんて恐ろしい子!(テーマソング付き)そのままだと痛い子が暴れまわる痛快娯楽電波小説だが、色々釘を刺してそうはなっていない所が好感触。『魔女』であることに固執する理由、ミミクロとの関係、そして序文最後の文章、辺りを心の片隅に留めて置くことでバトル物の枠に囚われない微妙な味わいが。…悲劇的なEDを最初に示唆しておくのは面白いと思った。


痛快娯楽…か?勧善懲悪…かな?格ゲー風味はガチか。展開自体は素直な熱血バトル物なものの、その周囲の狂い、ねじれっぷりがアクセントになってていい個性に。この時点ではかなり良い感じだと思われ。ただ、かなーりシロオたん(とミミクロとオセロ)に依存した面白さな気がするので次以降、生徒会メンバーのお話でどうなるかが期待半分不安半分というところ。


■感想リンク■

4840120595魔女の生徒会長 (MF文庫 J あ 2-7)
日日日
メディアファクトリー 2007-10