「これはゾンビですか?1 はい、魔装少女です」

「秘剣、鶴の恩返し。というのはどうでしょうか?」
「やめたほうがいいと思う」
「そうですか」
「でしたら、エーテルちゃぶ台返し、はいかがでしょう?」
「えー。パクっていい剣技とダメな剣技がある。それは後者だ」
「もう、みんな忘れてるでしょう?元々、わかる人にしかわからないでしょうし」
「いや、ダメだ。てか、あれは秘剣じゃない。魔法剣だ」
「そうですか」


あらすじ

地味な高校生だったはずの相川歩は、世を騒がす連続一家殺害事件に巻き込まれ、あっさり殺られた…が、何故か生きていた。事件直前に出会った不思議少女・ユーのおかげで、ゾンビとして蘇ってしまったらしい。
ゾンビなので基本夜行性。辛い日中の学業を終えて、近所の墓場でまったりしてたら、なんと空から女の子が降ってきた!?

「あんたを魔装少女に任命するっ! 光栄だろっっ!」

※歩は男です


とりあえず

ゾンビってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。
墓場から起き上がってきた奴といつ殺し愛が始まってもおかしくない、
刺すか刺されるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。女子供は、すっこんでろ。

こんな無敵に素敵なのはゾンビじゃない…


ゾンビでつきぬけろ

ファンタジア大賞・佳作受賞作で新人さん。バカネタ小説と考えていた時期が俺にもありました。実際はラブコメです。ラブコメなんです…。
何はともあれ、まずはタイトル勝ちだと思う。『これはゾンビですか?』がメインタイトルなんだぜ?ゾンビという(一部の人には)刺激的なワード+「This is a pen」関連のネタを彷彿とさせるな会話文。サブタイも「いいえ、ケフィアです」をリスペクトしているのは確定的に明らか。シュールさが産み出すこのインパクト!溢れるドラマチカ!!これはネタ的に何か凄い物が見られるだろうという期待感から特攻せざるをえなかった私。もし地雷でも、何か大切なことを振りきった核地雷はそれはそれで
で、読み終えてみたら。
ちょwwwwwwww普通wwwwwwwwwww。
まぁ、序盤こそ結構面白かったのではあるが。事前情報が表紙くらいなものだったので、妥当にカラー口絵最終ページで吹く。そして本編での歩の魔装少女化。ヒラヒラフリフリの服でぱんつ(男の)が見えるのを気にしつつ「260%……!」とかやってる姿をガチで書くこの神経。脳内では「変態!変態!変態!変態!」と連呼したくなるってもんですよ。いいぞもっとやれ。
だが、お話が進むに従ってこの勢いが落ちていった感じ。普通?のラノベになっちゃった。なんか皆この魔装少女コスチュームに慣れてきたようで、そっち方面のバカ話が極端に少なく。そしてそれに反して、意外と真面目に行われる異能バトル分+ラブコメ(?)分の増量。いや、バトルはあったっていいのですよ?ただ、主人公が(現段階では)絶対に死なないもんだから緊張感に欠けるのは-だと思った。同時にラブコメ成分も、今一つ振るわない気が。初っ端からフラグ全開なのも別にいいよ?だが、せっかくの同居状態なのにヒロイン同士での絡みとかトライアングラーな関係の描写が淡白なのは勿体なかったな…。
タイトルは何かを吹っ切ってる。けど、本編がバカ話、異能バトル、ラブコメと多方面を同時進行させようとして逆にそれに囚われて、結果としてどの要素も無難だが浅くなってるような気がした。掴みは良かったので今後もバカ話メインが希望っちゃ希望ですが、ラブコメでもホラーでもどのジャンルでも、展開を焦らないで焦点を絞ってじっくり書いていった方が良くなるのではないかなぁ。無茶設定+プロット無しで一応話を書ききる程の実力はあるわけだから。
4829133708これはゾンビですか?1 はい、魔装少女です (富士見ファンタジア文庫)
木村 心一
富士見書房 2009-01-20