「曲矢さんのエア彼氏2 木村くんの裏設定」

「巽……私、ここで体育座りをしてましたよ?いいんですか?寂しそうに、何もしないでぼーっと体育座りしてました。本当にいいんですか?いいのならここでずっと体育座りしてますよ?春が来ても、二年生になっても体育座りのままですよ?夏の猛威を前にしても体育座りですよ?暑くても体育座り、台風の中でも体育座りですが……体育座りって『天地の構え』みたいに万能なんですかね?私、やりきれますか?大人になってもお婆ちゃんになってもずっと、ずーっと、体育座りで……」


あらすじ

最近エアの調子が良くないのか、エア彼女の杏子をなかなか呼び出せずにいた木村。そんな中、木村のエアの師匠である曲矢サンノが突然「杏子は拉致したから」とかいい始めた。曲矢もエア彼氏の巽と最近会えずにいたので、彼女の妄想ストーリーに付き合わされるための虚言なのは確定的に明らか。だが、そこに偶然いた木村のクラスメイト・そよ子は曲矢の虚言にのってか知らずか「私が杏子だよ?」と言い張る。曲矢の方も「杏子(の魂)をさらって、そよ子の体に監禁した」とか更に調子に乗りはじめて…


九朗せんせ既読者ならそれなりに

前巻の結末が「俺達の戦いはこれからだ!」だったのでそのまま終わるかと思ったら、普通に続きが出ててまずそこで驚いたw 九朗せんせは単発が多い+内容が内容だけに続けるのも辛いかな、と感じたので、1冊で終わりかと思っていたが。
文章自体はいつもの中村節で安心。エア(妄想)彼女彼氏とのラブコメ(しかも見える人と見えない人がいる!)で、それにボール無しでプレイするエアスポ根物やら、常人では書こうとは思わないだろう…jk。しかも今回はエア彼女のエア誘拐とか、「結局それって傍から見れば何もやってないんじゃね?」的で、何が現実で何が虚構なのかがあやふやな所が、例の文体と相まって前巻以上に独特の感覚を堪能できたのは、九朗せんせのファンとしては良かった。
ただ、そういう幻惑される様を楽しむ所は良かったとしても、お話自体のオチのつけかたには不満が残ったのも事実。エアが万能過ぎるというか何と言えばいいのか。時折、話が膨らみそうな、面白そうな展開の尻尾が出てきたとしてもそれも実はエアに過ぎなくて…エアにエアを重ねて挙句他の人のエア(に絡めて)で決着が着いちゃうのってどうなの?巽と杏子の復活シーンとか、待望の場面のはずなのに、直接的な復活の原因を考えてしまうと盛り上がりにかけるように感じた。あとエア部の面々がキャラ紹介にしっかりと書いてある割には扱い小さくね?せっかくエア男の娘という稀有なキャラが出てきたというのに!


一番盛り上がるべき場所でその展開はどうなのよ…とは思ったが、前巻の後半で気になってたスタンドバトル化は鳴りを潜めてエアと自分自身の関係という所にちゃんとフォーカス戻ってたので、総合的にはそれなりな感じ。ただ、前巻からでも今巻からでもいきなりこれを読み出すのは諸刃の剣。(中村作品)初心者にはお勧めできない。
最後の最後のあの展開やら、新しく出てきたキャラや設定があるので続きをかなり意識してるとは思うのだけど…3出るかな?出たら新記録だね!


4094511741曲矢さんのエア彼氏 2 (ガガガ文庫)
うき
小学館 2009-11-18