「付喪堂骨董店-“不思議”取り扱います」

「お前、売る気ないだろ?」
「何を言っているの?さっきの営業トークを見せたかったわ」
「見てたから言ってるんだよ」
「ならわかるでしょう?その商品知識を以って、お客様の要望に見合う商品を的確に判断し、提示し、説明する。接客の基本だわ」
「売れなかったじゃねぇか」
「それは残念なことにお客様のご希望の商品がなかったからよ。決してわたしのせいではないわ」
「終いには神社のお守りを勧めてたじゃねぇか」
「お店にないから、お客様のご要望の品を他店の物ながら紹介する。お客様のことを第一に考えての行動よ。パワーストーンもサービスしてあげたし、確かに今回は売れなかったけど、感謝したお客様はきっとまたこの店に来てくれるわ」
「二度と来ねぇよ。不気味に思ってな」
「不気味?なぜ?」
「あれじゃ呪いの品しか置いてないみたいじゃねぇか」
「平気よ、だって全て偽物だもの」
「それを言えっていうんだよ」
「……迂闊だったわ」
「本物と信じて買われていたら、詐欺になるところだった。また失敗だわ」


『アンティーク』といっても年代物の骨董品や、古美術品ではない。ここでは幸運を呼ぶ石、未来の姿が映る鏡のような不思議な力が宿った器物を指す。『付喪堂骨董店〜FAKE〜』無愛想な少女が店番を勤める『アンティーク』を専門に扱うお店。ただし売物はほとんど偽物。しかし、極稀に"本物"が紛れ込んでいるから面白い。これは意図せずして『アンティーク』を手に入れてしまった人達の物語。


6月に2巻がでるので、購入するかどうかを見極めるために積本から1冊。
付喪堂骨董店〜FAKE〜』の店員二人、高校生の来栖刻也に舞野咲、それにオーナーである摂津都和子の3人をメインに『アンティーク』に関わる人達を描いた1話完結形式のお話。1巻では『偶然を引き起こす振り子』『病気を治すor引き起こす像』『書いたことを忘れないノート』『宵越しの金を持てない財布』の都合4つ。この作者の本を読むのはこれが最初なのだけど、基本的に淡々とした飾り気のない文章。読みやすいし、題材の雰囲気にはあってるのでこれはこれで好印象。ただ、時折微妙に古いネタ文が散見されるのが少し気になったかな。
内容。『世にも奇妙な物語』とか『笑ゥせぇるすまん』なんて頭に浮かんだが…そこまで黒くはないか(4話は完全に除外で)。全体的に優しい語り口だけど、それでも結末には何か皮肉とも思われる要素が籠められていて1話ごとに思うところがあるのが良かった。『アンティーク』の謎解き自体に然程驚きがあるわけではない。が、1話完結、しっかりオチをつけて、かつ作風を被らせないで(少なくとも1巻内では)短編4つってのは単純に多くのアイディアが必要で作者に取っては辛い所だろうが、読者に取っては1冊で凝縮して複数の物語を楽しめるので非常にお買い得感があると思う。

「……そう。確かに同類といえば同類ね」
「『アンティーク』によって罪を犯している者同士という意味で」

…他の二人と比べてオーナーの和子さんの出番が少ないのが気になったりもしますが、これは本筋に絡んでくるから?店名の『FAKE』の意味もあやふやにしたままだし、主人公の『アンティーク』もあるので短編のみの内容で終わらずに本筋も進める気が見受けられます。今の1『アンティーク』で1話という形がこの作品の魅力であると思うので、できれば短編の連続の裏で本筋も同時に進行して行くと嬉しいな。
結論としては次巻も購入確定、6月が楽しみです。


■感想リンク■
4話『プレゼント』は必見
咲…なんて恐ろしい子…!

4840235945付喪堂骨董店―“不思議”取り扱います
御堂 彰彦
メディアワークス 2006-10