「死せる魔女がゆく (上)」

「それに、もっといいことがあるの、知ってた?」
「<生ける吸血鬼>は魔法をかけることができるの――相手が望めばね」
「望む相手に魔法をかけたら、どんないいことがあるの?」
「セックスがよくなるのよ――レイチェル」
「まぁ」
「それに、あたくしは血をほしがる母の嗜好を受け継いでいるの」
「甘党の人が砂糖をほしがるようにね。あまりいいたとえじゃないけど、そうとしか説明しようがないわ。あなたが実際に試してみないかぎり……」


あらすじ

細菌兵器の事故により、人類の多くが死滅した世界。激減した人類に変わって台頭してきたのが<狼男><吸血鬼><魔法使い>等の<異界人>であった。少数ながら古来より生息してきた彼らは細菌兵器への耐性があったため難から逃れることができたのだ。
そんな世界で時は現代。舞台はアメリカ。人類と異界人は共存し、異界人の犯罪を取り締まる<異界保安局>なる組織も設立されていたりする。
レイチェル・モーガンは優秀な魔法使いで<異界保安局>の敏腕捜査官(自称)。本来ならもっと重要な事件を任されるべきなのに、最近はつまらない仕事ばかり。上司の嫌味にも耐えかねたレイチェルは友人のエリート捜査官アイヴィと辞職を決行。二人で探偵業をはじめようとするも、エリート捜査官を失った上司の腹いせに賞金を賭けられ命を狙われる始末。アパートも追い出され、行く宛の無いレイチェルはアイヴィと同居することになるが、彼女はれっきとした<生ける吸血鬼>で――


そもそも読者層がちg

あらすじに色々書いてますが要約すると

赤毛の魔女レイチェルが、相棒の美女吸血鬼とともに悪に立ち向かう!

と、非常にライトノベルらしいうえに、表紙がエナミカツミさんなので表紙に釣られてみましたw


で、第一印象が非常に「軽い」ということ。翻訳物なので文章自体はそう軽いってわけでもないのですが、内容とか主人公の行動とか色々と。命を狙われているのに、それと同じくらい危険な別の相手に喧嘩吹っかけたり、計画も立てずに「とりあえず行ってみればなんとかなるか」な行動がデフォ。とりあえず行動⇒ピンチ⇒他の人に運良く助けられる。元敏腕捜査官で探偵?なんですかそれ?更に

  1. BARの潜入捜査で吸血鬼(いい男)に魅了されかける
  2. アィヴィに貞操を狙われる⇒何故か(吸血鬼専用の)エロ本を読めと進められる
  3. バスでエロ本を読んでたら、そっち系の人に語られる×2
  4. 買い物で店員に見とれて脚を揉まれる(いい男)
  5. 小さくなってみた⇒ウホッ、いい男…(相棒のピクシーが)
  6. 元同僚(ドMでヘタレだが美形)に薬を盛って車を盗む
  7. 敵の親玉(ドSの美青年)に「仲間に な ら な い か?」

ハヤカワSFとかJAはぼちぼち読むこともあるんですけどFTってこんな(方向)のが日常茶飯事なのか!


って、ことはなかった。作者はP.E.A.R.L賞とかロマンティック・タイムズ・レヴュアーズ・チョイス賞受賞作家らしいが双方共に女性向けのロマンス小説の類。P.E.A.R.Lはパラノーマル・ロマンスで超常現象に関係あるロマンス小説のような意味か。そりゃ読者層が違う。寧ろハーレクインとかが好きな人のほうがいいんじゃないだろうか。
まぁ上巻は本当に「主人公の大ピンチ!⇒次回に続く」な終わり方なので事態も何も解決しておらず、挙句の果てにはアイヴィさんがほとんど出番が無かったりするので下巻も読むとまた印象変わってくるのかな、とも思う。


■感想リンク■

4150204497死せる魔女がゆく 上 [魔女探偵レイチェル] (ハヤカワ文庫 FT ハ 5-1)
ハリスン キム エナミカツミ 月岡 小穂
早川書房 2007-09-21