「クジラのソラ 04」

「泣いてるのか?」
「泣いてないわよ。ただちょっと、その。――ええと、これもまだ中継されてるの?」
「ああ。何かいいたいことはあるか」
「ええ、っと」
「うん。ええと、ひとことだけ」


「みんな、ありがとう!」


あらすじ

アリスの兄・アーサーの計画により、地球人類は『ゲーム』の秘密を知ることになる。ゼイの目的、ゲームの真実、そして自らの価値を。それらはゼイの支配によって安定していた現状を揺るがすのに十分な刺激であった。
一方<ジュライ>。郁恵の死をきっかけに、アウターシンガー第三段階を目指して袂を別つ冬湖。メカニックの聖一は郁恵と冬湖を同時に失った痛手から、雫は兄と冬湖に置いていかれたやりきれなさからヴァレンタイン島を後にする。今までやってきたことは全て無駄だったのか?失意の雫は渡されたメモを頼りに兄の足跡を辿っていく。そこで彼女が見たものとは―


苔の一念岩をも通す

スポ魂SFついに最終巻。3巻の時点で大風呂敷を広げ過ぎて残り1冊で収拾つくのか…と期待半分不安半分だったが、いい結末だったんでないかな。
3巻は視点がころころ変わるのと、雫の行動に一貫性が無い感じで正直微妙だった。が、今回は基本的に雫の行動一本で、目的もブレることなく最後まで貫き通したのでその辺りはかなり満足。天才が揃いも揃ってぐだぐだ悩んでる中、凡人(っつー割にはハイスペックだが)が停滞した現状を打ち破っていく様は痛快でした。
見所はやはり最終決戦前後。第三段階アウターシンガー一歩手前として圧倒的な力を持つ冬湖に対して「あんたが考えてだした結論は全部間違い」とか「私に服従しなさい」とか容赦ない言葉攻め。その対象は聖一にすら及ぶ、可哀想すぎる。そして、因縁の冬湖戦⇒実はさっきまでの会話は…⇒人類とゼイ初の共同戦線⇒最終防衛線は…の畳み掛けるような展開。熱すぎる。
初期のスポ魂の熱血風味とはまた違うが、巡り巡って戻ってきた印象すら。実力では圧倒的に差がある冬湖とのバトルでの作戦もそういう意味ではなかなか小粋。
4829119780クジラのソラ 4 (4) (富士見ファンタジア文庫 159-5)
瀬尾 つかさ
富士見書房 2007-11