「人類は衰退しました2」

「お嬢さん、神様の家に遊び*行きませ*か?」
「かみさま?」
「そうです。神のハウスです」
「いったことないですよ?」
「とても楽し*ので*よ」
「どんなぐあい?」
「お菓子をもら*たり、名前をつけてもらっ**できるそうですな、かくいう私のサーという称号も、元々は神様から与えられたものですな」
「ほふーん」
「いくます」
「ええ、行こうではありませんか」


ニコニコ笑いながら意識のどこかでは「あれ?」と感じていました。
知っているような、知らないような。
ちょっと気持ち悪い状態ですけど、じきに忘れることができました。

まくふぁーれん氏だ!


あらすじ

人類がゆるやかな衰退を迎えて、はや数世紀。人間は地球での主役の座をとっくに明け渡し、すでに地球は"妖精さん"のものだったりします。「わたし」は人類最後の教育機関を卒業し、妖精さんと人間の間を取り持つ国家公務員の"調停官"として故郷に帰ってきました。
ですが、高い知能を持つ妖精さんのまわりは不思議なことだらけ。理解不能な道具を創ってわたしの身体を小さくしたり、助手さんのお迎えに何度も何度も行かせたり。はたしてわたしは助手さんに逢うことができるのでしょうか…?


妖精さんの出番は減ってますが

ガガガ文庫最高の話題作の待望の続編。
今回は不思議なスプーンで「わたし」の体が妖精さんサイズになっちゃう「人間さんの、じゃくにくきょうしょく」と、助手さんを探して何故か無限ループに巻き込まれる「妖精さんたちの、じかんかつようじゅつ」の2編を収録。
「人間さんの、じゃくにくきょうしょく」はオチ自体は単純なものの、その雰囲気作りが秀逸。妖精さんサイズの「わたし」の見た世界は表面上酷くほのぼのしているものの、実際はリアルで生き死にがかかっていて…そのギャップが何とも言えず。薄々原因に気づいているものの、現在の知能ではなんともできず転げ落ちていく終盤は微妙にやるせない気持ちにも。実は怖い童話風味?グリム童話とかもダークなことさらっと流しますしねぇ。妖精さんモードの会話内容に時折顔を出す「わたし」のいい性格も普段より際立っていて素敵(?)でしたw
妖精さんたちの、じかんかつようじゅつ」は作者お得意?の時間ループ物の亜種。くろーんをそくとーで禁止された妖精さん達のお菓子にかける執念は異常。っつーかそこから助手さん探しに繋げちゃいますのですか!構造的に面白いお話。ただ、このお話に関しては本編よりも枝葉末節の部分の小粋さに感心することしきり。『TimeParadogs』とか日時計の腕時計とか。おじいさんも「わたし」に負けず劣らずいいキャラですな。


1巻があれだけ話題になって(実際相当面白く)、作者のネームバリューも有り、と事前知識無しに決め撃ちで買ってもまず外さないと推測される一冊。だが、実際にこうも容易く1巻に匹敵(or凌駕)する内容を出されてしまうと感謝と共に悔しさも少々感じていたり。面白いとわかっている物を買ってみて、実際に面白かった…って微妙な感情か。期待値とは↑でも↓でも変動があったほうが素直に感想を吐きやすいのだけど…。この作品の場合は1巻の肝である「妖精さんとのコミュニケーションの妙」の扱いを低目にして、なおこの完成度ってのもあるのか。
まぁ、結論は「悔しいけどやっぱ田中ロミオすげぇよ」ということで一つ。

4094510443人類は衰退しました 2 (ガガガ文庫 た 1-2)
田中 ロミオ 山崎 透
小学館 2007-12-19