「ライトノベルの楽しい書き方」

どうして、わざわざあんな「現実」みたいなイヤな物語を喜ぶ人が大勢いるのか、理解できずに、理解できないから見下して、それで安心しようとしていた。
どちらにも耽溺していない八雲から見れば、自分もあの生徒たちも、同じだ。
「私は、愚かだった」


あらすじ

与八雲は知ってしまった。
おっかない学園最強少女・流鏑馬剣=らぶりぃでふぁんしぃな新人ライトノベル作家・姫宮美桜 という真実を…
「正体を口外したらコロス」と無言の圧力で迫る剣。だが、彼女はスランプで次回作の原稿が1枚も書けてない状態であった。次回作のプロットは恋愛物に決まっているのだが、剣自身そのような経験が少ないため、筆が進まないらしいのだ。そんな折、八雲の従妹にして剣の担当編集・心夏は「八雲と剣で擬似恋愛をして経験を積めば?」と言い出した。果たして二人の行く末は、そして次回作は本当に完成するのか―


ありがちな書き出しですが

ハウツー本じゃないんだからねっ!王道ラブコメなんだからねっ!
メタ・ライトノベルっつーわけではないと思う。勿論「書き方」ってタイトルだけに作者は登場しているわけですが、それは劇中のライトノベルの作者であるし。ライトノベルのあり方、書き方について突っ込んで行く事も無い。ライトノベルはあくまで題材で、描かれるのは傲岸不遜のツンデレお嬢様と海洋生物マニアの恋の物語。ライトノベルを媒介にしたボーイミーツガール…それは何かと問われたらやっぱり王道ラブコメと答えるしかないわけで。
読んでて胸に響いたのが、剣の創作に対する姿勢。たかがライトノベル、されどライトノベルとでもいいますか。どうしてライトノベルを書き続けるのか?自分のしたいことは結局なんなのか?技術の拙さや話の軽さを認めたうえでクリエイターとして真摯にライトノベルと向かい合っていく彼女の姿は静かに胸に響きます。…普段が普段なだけに。ラブコメなのにこういう所が印象に残っているのってどうなのかとも思うのだけど、それがこの作品の味かな。創作への想いと、八雲への想いが結実した最後の「LOVEノート」はタイトルに相応しい素敵なオチのつけ方だと思いました。
正直、ラブコメ部分だけ見ると、ベッタベタな展開やらヒロインの属性過多やらで微妙な気も。だが、ここにライトノベルという要素が入ることによって不思議な魅力を持った作品に。ライトノベルという"ジャンル"が好きな人はより楽しめるんでないかなぁ。
あと、ちょっとケータイ小説に優しくなれる、かも?
4797345551ライトノベルの楽しい書き方 (GA文庫 (ほ-01-04))
本田 透 桐野 霞
ソフトバンククリエイティブ 2008-02-15