「under 異界ノスタルジア」

「……あんたは以前、俺に力がないと言った。でも、今、こうして力を手に入れた。次は何が足りない?異界使いになるのには不幸が必要なのか?確かに俺はあんたたちとは違う、他に選ぶ道もあるし帰る家もあるさ。でも俺は自分でここを選んだんだ。守りたいものが出来た、覚悟なら負けてないつもりだ。それじゃぁ足りないのか?」


あらすじ

人は死ぬと"異界"に落ちる。だが、強い未練を残し"異界"に落ちた魂は異形の姿となり、現世の侵食を引き起こす。
失踪中の兄から突然届いた手紙。それに従い向かった先の月士那探偵事務所で霧崎唯人は"異界"の存在、そして異界と現世のバランスを保つ"異界使い"の存在を知ることになる。兄からの手紙は"異界"を悪用した犯罪集団・悪夢愛好会の壊滅の依頼だったのだ。
後日、唯人はクラスメイトの頼みで駅で行方不明になった女生徒の捜索に付き合っていた。調査の結果、その女生徒は行方不明になった当日、柄の悪い連中と一緒にいたらしいことが判明する。どうやらその連中は悪夢愛好会と関わりがあるらしくて―




ぼちぼちですな

第14回電撃小説大賞・銀賞受賞作。新人さん。
まぁ、なんというか、普通?
多少アングラ風味のある異能バトル物って認識で間違いないかと思う。異界の設定とか、暗めの雰囲気の描き方とかはまずまずの出来具合。お話の方も好みかどうかはさておいて、それなりに良くできていたんじゃないかな。ラスボスがあの方ってのは、途中でバレバレだった気もするがお話にいいアクセントがついてここは素直に良かったと思う。そして、所長は…まぁあれもアリと言えばアリなのか。まだ1巻だし。しかし、所長を見てるとロザリオとバンパイアの萌香がまず頭に浮かぶのはどうなのか。
お話や雰囲気といった点では、及第点はあげられると思った。が、勿論不満な点もあるわけで。個人的に気になったのが台詞の堅さ。堅さ…というか心に響いてこないとでもいいますか。状況には合っているし、そのキャラがそんな台詞を言ってもおかしくはないのだけど、何かしら違和感が。特に唯人と所長にその傾向が強い気がした。キャラが台詞を喋るのではなく、作者が台詞を喋らせてるって感じ?ここでこんな台詞があった方がいいと思って書いているのが透けて見えてしまうというか。盛り上がる場面で、外連味溢れる台詞を喋っていても「フーン」と思って眺めている自分がいたのです。…思うに、作者は新人のくせに小利口にまとまり過ぎ。もう少しハメを外して書いてもいいんじゃないかなぁ。


煽るな

これが大賞だったりしたら「ぇー」と思うところではあるが、現実は銀賞なのでそこは無問題。
ただ、この作品の場合、期待と現実の落差によって生じるあれやこれやが読後感に与える影響が多い気がした。

  • 狂気と悲しみに彩られたサイコミステリー。(あらすじ)

   ラスボス関連はトリックかもしれないが、あのくらいでミステリーとは…っ サイコ?何それ?

   関連台詞あるけどさ、ノスタルジー感じられないんですが

  • 反翼の魔女が決意を問う、これは覚悟の物語である。(帯より)

   これも関連台詞あるけどさ、(所長の)半ば脅迫紛いのをここまで言い切っていいものか


期待したから裏切られるのだ。最初から見てなければ気にはなるまい…タイトルは無理だが。
商売だから、売らなきゃいけないからってのはわかるが、オーバーに書き過ぎかと思う。正直に書くと地味になっちゃいそうだが…。まぁ、あまり事前知識仕入れずに素で読んだほうが多分楽しめるよ、ってことだ。

4840241635under―異界ノスタルジア (電撃文庫 せ 2-1)
瀬那 和章
メディアワークス 2008-02-10