「リセット・ワールド 僕たちだけの戦争」

「確かに……おっしゃるとおりです……でも、我々大人が死に絶えた後の世界で生きてゆく子供たちに、将来の希望なんて残っているのでしょうか?確かに、生産された品物があるうちはそれを消費することで生きていけるかもしれません。でも、その品物を使い切ってしまえば、それで終わりです。生き残った子供たちには、それを作り出す能力も技術もありません。彼らは鉄筋コンクリートの高層ビルに住む、ジーンズとスニーカーをはいた原始人にならざるを得ません……。


我々が死んだ後、この日本で生きてゆく子供たちは、無秩序と暴力に怯えながら、食物を探して歩き回るだけの日々を送らねばならないのです。それでもなお、それを将来の希望とおっしゃるのですか?」


あらすじ

爆発的な感染力と致死率を誇る未知のウイルスが世界を襲った。
抗体の大量生産も間に合わなく、地球上の人類の8割が死滅した。…何故か罹患率が低かった子供たちを除いて。


それから5年後。大人は死に絶え、子供たちだけの世界。
生き残った当時の子供たちは各地で小さなコミュニティを作り、日々をなんとか生き抜いていた。東京近辺には比較的大きなコミュニティがいくつかあるらしい。立川辺りは『西東京共和国』等と名乗っているようだ。そんな東京を物々交換の為に目指す少年・園山慎吾。だが彼には本当の目的があって―


仮想戦記

『時空のクロス・ロード』等の鷹見一幸の新シリーズ。
自分はそもそも鷹見一幸の本は初めてだったりするのだけど、『時空のクロス・ロード』と同じ世界観らしい(あとがきより)。で、感想書く前に時空の〜の内容(感想)をざっと見てみた。…見事に食い合わねぇ。恋愛とか切なさとか全く無いわけじゃないが、この本を読んでそういった単語が頭に思い浮かぶことは少ないと思う。舞台は一緒なのかもしれないが、内容は別物だ。時空の〜と、新・時空の〜で作風が似てた(ようです)反動とかあるのかしらね?
お話の内容や、感動できるか?という点では微妙だが、舞台の描き方については好感が持てた。
内容的には「難破してないが難破物+ファウンデーションの仮想戦記風」といった所。前提条件としての限られた物資と空間、その条件下で各コミュニティはどう動くのか?といった点で。主人公の行動だけを追うのであれば正直食い足りない、が、それが周囲の勢力に及ぼす影響を考えると俄然楽しめるというか何というか。タイトルに「戦争」と入ってるけど、確かに戦記物の一種と言えるかもしれないな。今後は人をメインとして描くのか、勢力をメインとして描くのか。それによってまた変わってくるとは思うのだが、現時点では個人の感情を描いた小説としてよりは、荒廃した世界を仮想して描かれた小説という方面に魅力があると思った。
あと特筆すべき点として地形の描写の細かさが挙げられると思う。特に今回メインである立川〜大宮間の逃走中の地形や道具の描写はその辺り全く知らない自分でも「描写細けぇなぁ」と思ってしまうほどの力の入りっぷり。近辺に住んでる人ならまた思うところがあるのではないでしょうか。
個人的には好みの部類で楽しめた。が、万人向けかというと微妙…キャラ重視の人にはお勧めできないかも。実は1巻って意外にお話進んでないので今後の作風の動向が不明。展開はわかってるとしても。化けるか失速するかは2巻次第かもね。多分自分は出たら読みます。


そうそう、ネタ文がいくつかあるのだけど「死亡フラグ」で話が通じるのは無い。それは無い。話の雰囲気的に。
MHとかデッドライジングはわからなかったらスルーされるからいいけどさ…


4840241899リセット・ワールド―僕たちだけの戦争 (電撃文庫 た 12-18)
鷹見 一幸
メディアワークス 2008-03-10