「DOORS(2) 新たなる敵を修繕せよ!」

「できるかどうかは問題じゃない!理論が通れば、即ちそこにSFは――」


「在る!」

お前それで良いのか?


あらすじ

車に足が付いていたり、暑さ対策で毎日怪談話をテレビで流しっぱにしたり、梅雨時になると街中を巨大な植物が多い尽したり―どうみても「普通」ではないのだが今はこれが「普通」らしい。元の「普通」を知っている美弥から見ると不便に思えるのだけど、他の人はそうでもないみたい。
たとえば植物なんて、梅雨の終わり時には消えてしまうそうだ。ヨロイを着た偉そうな女の人が大きな赤い人を連れて街の高い所にやってきて、

焼き払え!

ってそれはらめぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
だめです。それはだめです。それなんて腐ki


そんなわけで仲良し姉妹の曾根崎美弥と智紗は世界を元の姿に戻すために、あちこちの異世界を修繕して回っています。一時は人には言えない姿だった智紗もなんとか可愛いリスの姿に戻り、そして最近の修繕で普通の人の姿を取り戻しました!あの頃は相当に落ち込んでいた美弥も大喜びです。だけど、当の本人は何やら思う所があるらしくて―

「世界を治すの、もうやめない?」


この作品は早くも終了ですね

神坂一の底力を改めて知らしめた奇作、待望の第2弾…にしてなんと完結巻。いくらでも続けれそうな作品だけに余計に早く感じた…んだが出たとこ勝負の作風からしてみるとこういう終わり方もアリなのかなっ。
1巻の触手妹の存在があまりに大き過ぎた。ので前程の衝撃は無かったのだけど、相変わらず頑張ってるとは思う。「ちょwwwwwwwおまwwwwwww」とか、「あるあ…ねーよwwww」的展開を無理やり「普通」にしてしまってその上で「真の普通」の人(でもないか?)はどんな行動をとるのか。馬鹿小説は馬鹿小説なのだけど、本人が馬鹿やってるのではなく、周囲の状況自体がこの極みにて馬鹿やっちゃってるのは他に類を見なくやはり新感覚。この所謂「やっちゃった感」が楽しかった。
突っ走ったSF感や18禁色欲姉にも心惹かれるものの、個人的に面白かったのがゴーレムの件。『えめす』なんて出したら後の展開は確定的に明らかなものの、そこで前半のソドムとゴモrが絡んでくるとは予想外であった。どうせE消えるんだろjk…ってこの方法で消すのかwwww ま、そりゃー油性だから消えますよね。
そして締めくくり方について。2巻で完結ってこともあり、唐突な部分は目に付くものの自分は結構良かったと思う。ラスボスがしょぼいとか、繰り返しオチなくせに繰り返される前の展開がおざなりで有効に機能していないとかはあるけど…展開自体は好き。予想される終わり方は大雑把に、男坂パターンとしっかり決着つけるパターンの二つ。色々逝っちゃってる作品だから前者のパターンで放り投げるのが楽だとは思ったのだけれど、意外にしっかり決着をつけてくれて…最後はなにやらしんみりと。楽しかった時間の終わり、っていうか微妙にノスタルジー感じさせるいい結末でないかとは思うのだけれど。『姉妹』オチもしっかりついてるし。
1巻ほど驚きはしなかったけど、2巻は2巻で面白かったので総じて満足。ただ、やっぱりシリーズ終わるの早いよ…頭も気合も使わずにさらっと読めて楽しめるシリーズはある意味貴重なのです。まぁ、新規参入しやすいのはいいことか。いくら面白くても長いシリーズだと一種の覚悟が必要だし。不条理に寛容な人なら手を出してみてもいいかもしれない。
4044146195DOORS II 新たなる敵を修繕せよ! (角川スニーカー文庫 46-19)
神坂 一
角川グループパブリッシング 2008-04-01