「付喪堂骨董店5-“不思議”取り扱います」

「刻也、あなたは優しい。
―でも傲慢だわ」


あらすじ

『アンティーク』といっても年代物の骨董品や、古美術品ではない。ここでは幸運を呼ぶ石、未来の姿が映る鏡のような不思議な力が宿った器物を指す。

付喪堂骨董店〜FAKE〜』はそんな『アンティーク』の"偽物"を扱う骨董品店。今日も店内にはオーナーと店員の3人だけでお客さんの姿は見当たりません。けど、『アンティーク』絡みの不思議な話だけはちょくちょく舞い込んできます。さて今回の品物は―


変化の兆しが

『アンティーク』を題材に不思議でちょっと切ないお話を描くこのシリーズ。今回も3編+1編で基本的には、変更、無し?


第1章『幸運
登場アンティーク:持ち主に幸運をもたらすバングル
典型的な自滅型のお話…かと思っていたら微妙に変化してきた。結局最後は自滅っぽいのだけど、そこに至る過程にトリックが。「な…なんだってー!!」的面白さはあった。でも、これ前提条件少なくて読み切れないだろw 「幸」も「倖」も「ゆき」って読み普通にあるしな。『心声』の件も含め展開に工夫を凝らしてあるのは良かったけど、釈然としない物もある。


第2章『希望
登場アンティーク:世界中のあらゆる悪意が封じられているという壷
効果が概念的で今ひとつ実感がわかないアンティーク。お話もあまり付喪堂と関係無かったり。いや、開幕早々文字通りド壷に嵌ってはいるのですが。メインメンバーの出番がほとんど無いのに業を煮やしたか、前フリから欝やグロ展開に走ろうとする予感がひしひしと。…していたけど、終わってみたら綺麗なお話だった。ただ、これはどっちかというと3章の序章という要素が強かったかな。


第3章『言葉
登場アンティーク:望んだ人に、想いを託すことのできる葉 世界中のあらゆる悪意が封じられているという壷
シリーズ中でも珍しい続き物。2章の後日談…なので件の壷も引き続き登場。この1冊の中での立ち位置が面白い章だと思った。2章の設定を利用しての引っ掛け、次の章でも使われるアンティークの登場、終了間際の咲と刻也の諸々、など色々見据えて書かれていて上手い。正直この3章が単発のお話だと、本全体としてかなりモチベーションが下がるのではないかとも思われたり。要点だけ摘むと短いお話ではあるものの、母と息子と周囲の状況が醸し出す切なさ乱れ撃ちでこれはこれで結構お気に入り。
ただ、姉の言動が…あれってどうなのよ?


第4章『本音
登場アンティーク:望んだ人に、想いを託すことのできる葉
本編。どう見ても惚気です。本当にありがとうございました。なにそのだだ甘いコトノハの使い方。…まぁ、ラストは良かったんだが、結構長丁場だった衣装選びの部分の破壊力はそんなでもない気もした。あと、待ち合わせ時の咲の格好が黒ニーソ+ツインテールとか(押絵付き)大変なことになっていた件。これは絶対他の人から声をかけられて待ち合わせがgdgdになると思ったがそんなことはなかったね!


シリアス3編にサービス1編という形は不動だったので、表面上大きく変化した感じは無い5巻でした。ただ、シリアス3編の中にこれ以降メインメンバーに関わってくるような新キャラが登場。他には咲が病んdr…もとい重い胸中を仄めかす場面があったりと、次巻以降の展開を気にかけているような気配がひしひしと。どう考えても重くなっていきそうなんですが、その場合恒例の4話目は今後どうなってしまうのでしょうか…

404867465X付喪堂骨董店〈5〉―“不思議”取り扱います (電撃文庫)
御堂 彰彦
アスキーメディアワークス 2009-01-07