「ぱんつぁのーと」

実は前島さんは過去の記憶を消した戦闘奴隷で、ご主人様である城介の子供を作りたくて自分から風呂に入ってきたんだよ。

は?と思ったが全て事実です

あらすじ

桐亜城介は怖いもの無しの美少女である前島祭華に意を決して告白することにした。だがその時、風の悪戯か彼女のスカートが翻る。肌色しか見えなかった。祭華はパンツを穿いてなかった。もっとも、彼女に言わせるとこれは好きで穿いてないのではなく、パンツを穿けない(穿いてもどこかに消えてしまう)体質らしいが…
衝撃の告白の一件以来、彼女の秘密を知ってしまった城介は頻繁に祭華につきまとわれることに。そしてある日、城介は祭華に巻き込まれる形で非日常に遭遇する。異次元の人さらい一味が美少女である祭華を狙って襲撃してきたのだ。異空間に囚われ、一介の高校生である城介にはどうしようもできない状況…のはずだった。だが人さらいに襲われた祭華の体から不思議と見覚えのある銃がころっと出てきて―


色々と迷走している感じ?

新人さんによる、ぱんつはいてない小説。

「穿かないんじゃなくて、穿けないんです!!」

とかカラー口絵とか表紙よりさらに加速している最初の押絵とか『ぱんつはいてない』を推しているのは確定的に明らか。実際穿いてないし、穿けないという設定がストーリーに絡んでくる場面もあるにはある。が、最後まで読んでみると中二病全開学園異能で…ぶっちゃけ「ぱんつ穿いてないって設定無くても別にいいんじゃね?」と思ってしまった。
表紙では主人公が手に妙な物体を装備してはいる。が、裏表紙でのあらすじには具体的に学園異能っぽいことは一言も書かれていないし、普通『ぱんつはいてない』ならラブコメとか多少エロゲっぽい内容を期待してると思うんだ。なのにそこで斜め上の方向に物語りは突っ走り唐突に始まる学園異能バトル。ちょっと遠慮してしまう『ぱんつはいてない』を肯定してもらっているのに、それを蔑ろにするとは誰得?…それならそれで面白ければいいのだが、実際に始まったのは中二病ワードの羅列で

そうだ。これは《魔銃アテムドラークグァムエ》はるか遠くの世界にいる銃職人が己が人生をなげうって作り上げた因果を打ち抜く銃。相手を吹き飛ばすと同時に魂に焼きついた業をなぎ払い、その魂が因果で汚れていれば魂をも共に砕く非殺傷だが一撃必殺の魔銃。
この状況を一気に打破する滅びた世界の宝物―遺宝物(ルインレリック)だった。

痛い。何かが、心が痛い!…多分わかってて、このくらい振り切った方が面白いと思ってやってるんでしょうけど。痛みをネタとして楽しみに変換できる人ならまだしも、この影響で普通の学園異能なはずが、異常なまでに一般人を寄せ付けないオーラを出してしまってます。そういった痛い部分を除くと、序盤の一見関係なさそうな場所から伏線を張ってあったり、伏線を的確に利用してピンチをチャンスに変えるといった基本的な部分が割合良くできていたので…まさに、どうしてこうなった!主人公が過去の記憶を部分的にでも取り戻したせいか、学生にあるまじき冷静さを突然発揮するにはちょっと違和感を覚えましたが。
ぱんつはいてない』か買うしかないな!→そもそもぱんつ穿いてても穿いてなくてもあんまり関係ない学園異能でした→しかも果てしなく中二的ですが、何か?的な迷走を繰り返したあげく、掴めたはずの読者を逃がしてしまっているように思いました。意外といっちゃなんだが、黒幕の正体を突き止める部分とか最終的なピンチを乗り越える部分とか地味ながら冷静によく書けてはいるのだけど…ね。正直、悪食の人にしかお勧めは…
しかし、8月に2巻が出るという。私?突撃しますよ!

4086304856ぱんつぁのーと (集英社スーパーダッシュ文庫)
月見里 一
集英社 2009-04