「ストーム・ブリング・ワールド1」

「その猫は、何ですかー」
「何って……。家庭教師とか、遊び相手とか、そんな感じ」
「あのー、リェロンくんは、猫に何を教えてもらうんですかぁ」
人生


あらすじ

少女・アーティは、本人にその才能は無かったものの、父に愛されたい一心で嘘をつき、カルドを操るもの―セプター候補生として神殿で学んでいた。そんなある日、少年リェロンが転学生として彼女の元にやってくる。まだ若いものの、多数のカルドを容易く操る彼は実は<サダルメリク>の使徒として<黒のセプター>の企みを阻止する目的で神殿にやってきたのだった。そして今回の<黒のセプター>の目的には何故かアーティが関係あるらしく―


相変わらず面白い

6年程前にMF文庫Jから出ていた作品の新装版。全面的に加筆修正されていて、ストーリーの展開も多少異なっている…らしい。
せっかく新装版買ってきたんだから、最近あまり起動されてなかったカルドセプトDSでもちょっとやってみるか…と思ったらこの作品はセカンドベースだったのな。1ベースのDS版には無いカードやシステムがあってちょっと寂しく思った。昔の作品の方がゲームとして新しい方を取り扱っているのはちょっと不思議な感覚だったけど。


で、本編だが、相変わらず面白い。改稿前の作品も、(単品で読んでも楽しめるという)幸福な作品でゲームのノベライズとしては個人的には5指に入るのだけど、旧版のいい所をそのままで、修正でより今後への期待値が上げてきている。
修正前と変わらず面白い点としては、まず、ゲームの内容を小説にしっかり反映しているところ。本編がボード+カードゲームなのだが、ゲームの主役で花形といえるカードをしっかり本編に準じた形で登場させているところが素敵。特殊能力の表現とか、強弱の問題とか。グリ猫にマジックボルトとか一部苦しい所はあるけど、そんな細かい所気にしてもなぁ…という気もするのでそれは忘れておく。
次に、お話自体が素直に面白いのが挙げられると思う。ゲームのノベライズというと、ストーリー追って終わりやら、キャラだけ借りた棒にも橋にもかからない番外編やらが見受けられる昨今、普通に読んで楽しめるファンタジーのボーイ・ミーツ・ガールというのは結構貴重なのでは。新装版1巻の範囲限定ならアーティ側はまだちょっと…というレベルだが、リェロン側の方の心理描写はそれなりに充実していて…この無表情ピュア少年が2巻以降で、どんな風に変わっていくのか、デュエルの様子も含めて非常に気になります(展開同じかもしれないけどな!)。
あとは改稿部分となるわけですが、旧版を読んだのがだいぶ前で、かつ本が手元にないので細かくは不明だったり。基本は一緒だけど、時折記憶に無い文章が紛れ込んでいるような…レミのカードに感応しちゃう能力って前からあったっけ?大きな流れ自体に変化は無いものの、1巻終了時点で、旧版2巻の最初の内容を含む辺りまで話が進んでいるので、同じ結末ならかなり描写が濃厚になる予感!もしかしたら結末変わってくるかもだけど、それはそれで楽しみ。しかし、ページ数は大差無いはずなのに、追加要素があってストーリーの進みが速いって作家さんって本当に凄いですね…

あと帯にうぶちんの作品が結構沢山載っているのだが、出版元はMFなのに各社の文庫が並列して載っていてちょっと感心w

4840128618ストーム・ブリング・ワールド1(MF文庫ダ・ヴィンチ)
山本ヤマト
メディアファクトリー 2009-08-21