告白

原作面白いんだが、読んでて嫌な気分になることこの上無しなのと、内容的にも構成的にも映画には向いてないんじゃないかなぁ…とか思ってて最初はスルー予定だった映画版。けど、最近他の映画見る前の予告編を見て原作にあるまじき躍動的な映像と監督の名前を知り意見を改め観に行くことに。
初日の夜で客の入りは30人程度。…ネームバリュー考えると少ない気もするがR-15だとこんなものかもしれない。流石に見るからに中学生みたいな人はいなかった。


あらすじ

とある中学校、1年B組。終業式後のホームルーム。担任・森口悠子が?あの事件?…数カ月前、学校のプールで彼女の一人娘が死亡した事件…の真相を話し始めた。事故死と判断された娘は、実は、クラスの中の2人=犯人A・Bに殺されたのだと言う。それはまさに衝撃の告白であった。森口は少年法で守られた犯人たちに、ある想像を絶する方法で処罰を与えると宣言するが―


素晴らしい映画化だった

「告白」の形式(語り部や語られる形式)自体は映画化にあたって微妙に省略されたり変更されていたものの、基本的には原作の忠実な映画化だった。冒頭の森口の淡々とした語りは最初は「これはあまりにもあんまりな棒…!」かと思ったりもした。が、その淡々とした語りの調子は変りないのに、語られる内容によって生徒の皆さんの態度が動から静に一瞬にして変化するシーンとか、生徒の皆さんと同様に観客も一瞬にしてハッと引き込まれる。あとはもう最後まで心情的にはノンストップで。
誰かの「告白」という形で視点を変更しつつお話は終末に向かって突き進むわけですが、衝撃的なシーン→時間がたってちょっと安定して微妙に観客安心→次の「告白」者の視点でそれが根底からぶっ壊され…的な展開が多く、常に緊張感を持って見ることができたというか、適度にヤマが用意されていて(かつその入るタイミングが絶妙で)中だるみ感が無かったのが実に良かった。それでいて最後の最後はまさに最後に相応しい幕切れ。
ぶっちゃけると、映画版は作品形式からして苦労すると思っていたのですよ。冒頭の犯人を挙げるシーンや異物が混入した牛乳シーンが衝撃的過ぎたりして。あと章ごとに公開していた原作はその辺問題無かったけど…通しで見るのが前提の映画版だと中だるみに繋がりかねないと思っていた。けど、そんなの感じさせずに最後までスクリーンに引き付ける構成が匠。ある程度は監督らしい、躍動感のあるシーンを独自解釈で挿入しつつも、2時間という尺の中で原作をほぼ完全に再現したのは流石の一言でした。こんなに原作に忠実(である意味大人しい)な映画もつくれるんだ…という新しい発見
原作の内容を考えると単純に「面白い」という表現を使うのは言葉が足りないかな…とは思う。が、内容の善悪を考慮しないでエンターテイメントとして言うなら映画としては間違いなく「面白い」。今のところは今年みた映画で最高かも。ただし、この映画をみても決していい気持ちには慣れないのは確定的に明らか。第九地区が「悪趣味だが面白い映画」とするなら告白は「悪意があるが面白い映画」か。
B003HGPAEK告白 オリジナル・サウンドトラック
渋谷慶一郎
ホステス 2010-05-26