「星界の断章2」

「サグゼール、人間関係がうまくいってないの?」
「どうしてそうなるんだ」サグゼールは憤然とした。「うまくいっているとも」
「なら、いい」
「心配してくれるのか」
「なにを?」
「なにをって……」サグゼールは肩を落とし、「ぼくのことを」
「べつに」
「ええと、驚いたかな」
「べつに」
「なぜ驚かないんだ?」
「怒っているの?サグゼール?」

エクリュア愛されてるな


『アーヴによる人類帝国』を舞台としたスペオペ(多分)『星界』シリーズの短編集第2弾。本編は現在『星界の紋章』が全3巻、続編『星界の戦旗』が4巻まで出てます。細部まで練りこまれた世界設定と(特にアーヴ語周りは必見)と豊かなキャラクター性が魅力。戦旗1〜2辺りは何度読み返したことか。ジント、ラフィール、ペネージュ程度はフルネームのルビ全部覚えてしまったよ…。近年の国産純SF物では個人的に最高峰の一つ。当時ハヤカワばっかり読んでた俺は赤井孝美の表紙に釣られて買ってしまったが思わぬ拾い物であった。SF物に抵抗がなくて未読の方は是非にと。主人公の視点が作中の世界に対してまっさらな状態で始まったり、ボーイミーツガール的要素もあったりして割とすんなり読めると思います。『紋章』は微妙かもしれませんが導入編ということで、『戦旗』からは盛り上がりますよー。


というわけで断章2ですが、書き下ろしは巻末の『墨守』のみで残りはドラマCD、フィルムブック、SFマガジン掲載(一つだけ)の短編となっております。ドラマCDやらフィルムブック掲載のが多かったのでほとんど未読!書き下ろし少なくても無問題!断章1は本編とかけ離れた雰囲気のお話が多かったりもしましたが、今回はあくまで本編の内容を補完する形の番外編が多くそこは好印象。断章1のふざけた話もそれはそれで面白いのだけど、ちとやりすぎ感が。短編集なので本編と比べて長いお話が描けないこともあり戦闘描写等は少なかったが、その分人物間の小粋な会話が多く楽しめた。優雅で婉曲な嫌味がこの作品の醍醐味ですよ(違。ぺネージュさん本人の出番が少ないのは残念。あとラフィール殿下関連のお話はどれも良かった。本当にちょっとした会話なんですが、前提となる話の流れを知ってれば感じ入る台詞が多く素敵。ただ、やたらマニアックな人物に焦点をあてた話が多く「こいつ誰だっけ?」と思うこともしばしばあったり。で、思い返してみたら前回の戦旗4が2005/12だったから…なんと2年強ぶりの新刊。『紋章』のお話もあったしそりゃ忘れますわ。戦旗4も微妙な所で終わったし作者は続きを早く書いてください。で、近況を見るためにあとがきを楽しみにしていたのですが…あとがきねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。…断章1も無かったっけ?



■感想リンク■


4150308802星界の断章 2 (2)
森岡 浩之
早川書房 2007-03