「バニラ A sweet partner」

「今までさ、楽しかったよね」
「そうだね。凄く、楽しかった」
「幸せだったよね」
「うん、すっごく」
「良かったよね」
「もちろん、最高だったよ。だから、後悔なんかしない」
「愛してるよ、ケイ」
「愛してる、ナオ」

やっぱね、銃は屈強な男が持つよりかわいい女の子が持つもんだよ。うん、絶対。


SD文庫大賞受賞作『黄色い花の紅』の作者アサウラ氏の2作目。自衛手段として銃の所持が認められた日本。前作と同じ世界設定で繰り広げられる銃×百合なガン・アクション。偶然から4丁の銃を手に入れた女子高生、海堂ケイと梔ナオは自らの置かれた境遇を打破するためライフルによる狙撃という犯罪に手を染めていく。次第に狭まる警察の包囲網。手にした銃とパートナーだけを信じ、「ただ、一緒にいたい」がためだけに彼女らは警察からの逃避を続けていく。彼女らの逃避行の果てに待つものとは。


最初の1/3弱くらいは微妙。
と、いうのも銃を軽率に使いすぎ。彼女らの約束の発端となる最初の一人(+おまけで一人)程度は狙撃する理由もわからなくはないのだけど、街中で柄の悪い連中に絡まれたくらいで報復で殺っちゃうのはどうかと。他に手段が無かったから?肉親はともかく、赤の他人なのだから無視するなりいくらでも方法があったとは思うが…。撃ってる数は3発。それこそ終盤の包囲網の中で撃った数と比べれば少な過ぎるが、自己防衛と狙撃では状況が違いすぎる。他者を一方的に殺害できる狙撃。その1発にかかる重みをもっと大事にして欲しかった所。
残り2/3は良かったよ!
中盤、ナオがケイへの最初の"約束"を果たすところから状況は一変、日常は終わりを告げ先行き不明の逃走劇へと続きます。当初の目標を果たした上、最早警察に追われる身となった二人の目的は「ただ一緒にいること」のみ。行き場を無くした二人は学校にて篭城戦を始めます。とはいっても弾薬は有限、いくらかは耐えられても先行きは一つ。安定した未来よりも二人で一緒にいる一瞬の為に銃を撃ち続けるその姿がただただ切ない。ナオとの触れ合いの中で今になって気づく親の気持ち、今になって示されるライフルでの狙撃以外の解決法。全てが遅過ぎて、現実は取り返しがつかない状況に追い詰められますが…それでも「後悔なんかしない」と言い切った点が感無量でした。
前作では銃の薀蓄がちょっと多すぎる感はありましたが、今作では必要最小限程度に留められておりその分内容が充実していて好印象(相変わらず物語において銃の占める割合は多いけど)。内容描写も今回は過不足無く、大賞作家の2作目というのはえてして期待が大きいものだけど十分それに応えられていると思いました。
黄色い花の紅からは白石奈美恵、新人の河東田、中島紫炳らが再登場。全く関連は無いものの中島さんは黄色い花〜より活躍してたのではないだろうか。

408630354Xバニラ―A sweet partner
アサウラ
集英社 2007-04