「レジンキャストミルク8」

「わたし、いけなかった、んです。マスターを好きに……なっては、いけなかっ……た」
「ここに来ちゃ、いけなかった!私がいたら、いたから……!」
「私は生きたかっただけ……なのに!ただ、生きようとしただけなのに!そんなこと、考えちゃいけなかったんです!人を殺すために、世界を滅ぼすために作られた、ただの機械が……そんな……人間みたいな……大それたこと!」


あらすじ

大きな犠牲の果てに芹奈を取り戻すことに成功した晶達。だが、一向に芹奈の状況は改善しない。彼女を救うために、晶は一つの決断を迫られる。
一方、力を蓄えた樹と鏡そして【無限回廊】も自らの目的の為に行動を起こし始めていた。
【実軸】と【虚軸】。互いの命運を賭けた殺し合いが今、始まる。


ラストバトルが…

この8巻でついに完結。前巻の盛り上がりっぷりや、相手が相手なだけに壮絶な結末を期待していたものの、割とあっさりと決着がついて肩透かしを喰らった感が。綺麗な終わり方だし結末自体にそう文句は無いのだけど、そこに至る過程には少々不満があったり。
恒例のカラー口絵+今回はプロローグの一部も漫画に。これを含めて前半部の各登場人物の胸中はなかなか上手く描写されてると思った。最終決戦間近ですらほのぼの展開を入れた上、ビター風味の味付けは大変gj。特に硝子は上記の台詞も含め直球ド真ん中な意思表示ではあったりするのですが終了間際にしっかり「己の意思表示」をしたことは大変意味があることではないかと!
で、登場人物の胸中の描写、前口上までは良かったのですが問題なのがラストバトル。樹+鏡+【無限回廊】組は真意がよくわからない部分があったものの基本的には【虚軸】の【実軸】への統合が目的なのでまぁOK。晶の目的が不明瞭で戦闘の流れで「なるようになりました」というのが微妙。戦闘に突入して後は野となれ山となれ状態。目的意識も希薄で折角良かった前半が生かされてないのが残念。あと「倒していいかどうか不明な相手に総力戦」「ネア先生は守りの要なのに最初に突撃」辺りはどうなのよ。まぁそんな微妙〜なラストバトルでも硝子「から」晶「に」自発的に命令を出した所はなかなかに素敵。ここにきて硝子の株大幅アップです。


完結記念で+1を入れて★4に。エピローグは悪くないのだけど、そこに至る過程が物足りなかったかも。1冊のみで言うなら前巻の方が完成度は高かったか。まぁしっかり完結しているので最後まで追いかけた方が良。

4840239762レジンキャストミルク 8 (8) (電撃文庫 ふ 7-14)
藤原 祐
メディアワークス 2007-09-10