「クダンの話をしましょうか」

「あなたは一人でいたい――臆病だから」
「あなたはみんなを観察する――寂しいから」
「本当は誰かに自分を見つけてもらいたいのね……そこだけは、私の友達と同じ」


「あなたは誰にみつけてほしかったの?」


あらすじ

夜の駅前の噴水広場の片隅、小さな机で占いをしているセーラー服の少女―クダン。
彼女には人の未来の災いが見えた。が、それを当の本人に伝えると彼女はその人の未来から消されてしまう―忘れられてしまうのだ。親しい人間の破滅がわかっているのに伝えずにいることなどできるだろうか?クダンは自分の悲しい宿命を変えうる存在「」を捜し求めていた。


高校一年生の直辰が、最近様子のおかしい幼馴染・つぐみの後をつけて不思議な場面に遭遇した。普段からは想像もできない派手な服に着替えた彼女が、駅前でセーラー服姿の占い師と口喧嘩をしているではないか。しかも彼女は自らを「ヌエ」と名乗り―


地味なりに

なんか面白かった。
ストーリーが感動的だった、ここの展開に度肝をぬかれた、とかは別に無かったのだけど、最後までしっかり『切なくてやさしい物語』していました。作品全体の雰囲気とお話がかっちり噛みあっていたのが要因かしら。ネット上というある意味現実とは異なる空間をドッペルゲンガーとかを媒介に使いつつ、鵺やら件が中核を成すお話に違和感無く使えていたのはお見事。ネットでのコミュニケーション依存とか、その気になればもっと突っ込んで書ける題材でも、一歩引いてあっさり目の描写で終わっていたのも結果的には良かったのかもしれない。
主人公があまり能動的に事件に絡んでこないこともあり、最初から最後まで2速でギアをローにもハイにも入れず淡々と進行(幕間は除く)。一応、主人公らしく各章最後には憑き物落とし(?)っぽい場面もあるものの災厄を回避しちゃうので総じて展開は地味。これだけ地味で低血圧だと没個性なんじゃぁ…と思えるが否。この淡々と進むお話こそが個性。そういう点でも読んでて楽しめました。


続きは…出るのかな?出るといいな。ただ、1巻はかなーり『コクバン』に乗っかった話だったので、違うネタを元にするなら相当雰囲気も変わる気がする。どうなることやら。

4840120633クダンの話をしましょうか (MF文庫 J う 3-5)
内山 靖二郎
メディアファクトリー 2007-10