「ギロチンマシン中村奈々子 高等教育編」

「じゃあ、親しみをこめて渾名をつけるとか」
「渾名……?」
「僕の存在を一言で表すような、ぴったり似合う渾名を考えておくれ!」
ニート……?」


「いや、うん、渾名はやっぱりやめよう――そうだなぁ、僕と亜砂里ちゃんはほら、家族みたいなもんだから、ここは親しみをこめて『お兄ちゃん♪』とか……」
「中村さん……前から軽薄で馬鹿で何を考えているかわからないひとだったけど、少なくとも変態ではないと思っていたのに……!うぅ、うぅう……!」


泣かれた!?


あらすじ

『中村奈々子』に恨みを抱くロリエの魔手から逃れるために、ついに<学園>から脱出した山田と奈々子と赤ずきん。しかし船が難破し、3人は離れ離れになってしまう。
山田がたどり着いたのはアメリカ・ガシュコックなる幼女が統べる<王国>という名の人間の町。徴兵される前にお世話になった遠い親戚と再会、あまりの静けさに違和感を覚えつつも平凡な日常を過ごす山田。そんなある日、<王国>の外周部と中心部でほぼ同時に大規模な破壊活動が行われて―


これで問題は全て提示した

と、いう台詞もあったりと次巻に向けての伏線張り、問題提示に終始した内容。
前巻までがラブコメとSF(っぽいの)をハーフ&ハーフで進めていたのが、ここにきてSF分増量でシリアス寄りに。古典的な「ロボットと人間」っつーテーマを軽妙な会話のラブコメ風味で味付けしていたのがこの作品の魅力だったので、正直前半は今ひとつであった。コメディ要素はあるにはあるのですよ。ただ、単発ネタで終わっているというか、全体のシリアスな空気の中で浮いている感が残念…なような。それでいて、根幹には触れていないので私はどうしたらいいのですか。
一転、『noise』以降、話の大きく動く後半はなかなか良かった。次第に明かされゆく世界の真の姿。シリアス路線は変わりないのですが、吹っ切ったような衝撃展開も続出。特にインパクトの大きかった『獣の森<後編>』なんか『蟲と眼球』シリーズであるまいし、あろうことかこのシリーズでこんな展開入れちゃいますか!な感じ。この展開が必要か?と言われると「ロボットと人間」というテーマにおいては別に必要無いとも思うが。しかし、このテーマ自体が危うかったら話は別だ。「ロボットと人間」というテーマをフェイクにするか内包するかは不明だが、最終的に意外にシンプルなテーマになったりする気もする。「人間賛歌」(JOJOですか)とか?本家中村奈々子の活躍次第か。まぁ、これだけエグい展開を入れておいて華麗にスルーされる可能性も多々あるのだけど。それでも、これが今後の展開に生かされるとしたらかなり面白くなりそうな予感は、ある。


まぁー問題はオチてないってことなんだけどね!
どうなることやらです。断片的に見ると面白そうな素材が多いのだけど、いい素材でも料理して不味くなったら意味ないし。料理と違って素材の多さは縛りにしかならないのが難しい所?シリアス分多目でも結構いけること(自分は)が発覚したので、無理しないで次も頑張って欲しいかな。
んでまた『大日本帝国』ですが…名前だけよね、恒例よね。


■感想リンク■

4199051759ギロチンマシン中村奈々子 高等教育編 (徳間デュアル文庫 あ 4-3)
日日日
徳間書店 2007-12-06