「れじみる。Junk」

「佐伯、せんせい」


「ふん。まったく、……、余計なこと、してんじゃ、ないわよ」


あらすじ

【虚軸】に関連した一連の事件が終わり、一ヶ月半程が過ぎた。
そして今日は待ちに待った狭間学園の文化祭。硝子と友人達は議論の末、晶のクラス・二年三組の『TS喫茶』から回ることになった。望んだはずの平穏な日常。けれど硝子は、自分の意見も言えない程にすっかり大人しくなってしまった蜜の様子が気になって―


本編ラストまで読んだなら必読

先日8巻で無事に完結した『レジンキャストミルク』の日常部分に重きを置いた短編集第二弾…かと思ったら後日談もあった。というか後日談メイン。後日談である文化祭の話を中心に回想シーンが交互に挟まる形で展開+おまけで海賊本掲載の短編2つ。短編1つ+おまけの2つ以外は書き下ろしなので描き下ろし含め相当お得感は高いような気がする。イラストも質、量共にクオリティ高し。本編で主となる問題にはきっちり決着はついてたものの、後の展開については投げっぱなしだったため、こういった形でアフターフォローが入るのは正直嬉しかった。
後日談となる第4話「ありがと、ばいばい」(+インターミッション)は『壊れた万華鏡』を失い、大人しい性格に戻ってしまった蜜を中心に据えたお話。そこが一番気になる所だったしな!これですっきり。一見粗野に見えつつ、実は作中で最も繊細な精神構造を持つ彼女の葛藤を通して物語の終わりが美しく描かれています。佐伯先生への「ありがとう」の台詞なんか感無量です。ここまで読んで、初めて完結だと言い切ってもいいかもしれない。
そして、他の短編は回想シーンということで過去のお話。いなくなってしまったあの面々も再登場。後日談だけだとその辺り、物足りないかもしれないしね。基本的にほのぼの100%ということでそんなに重い展開はないのですが、結末を知ってる分はっちゃけてる中にも一抹の寂しさが。
短編⇒後日談の流れでのしんみりさもいい味だしてて単なる短編集では終わらない感じが好印象。おまけ二つも初見ならやヴぁいパロネタ続出で相当のインパクトがあることうけあい。

「あら、絶望した?人間同士のコミュニケーションが希薄な現代社会に絶望した?」

結論として本編完結まで読みきったら必読かと。ただ、『Junk』は素の『れじみる。』以上に本編の内容を知っていること前提になっているので単発で読んだ場合はそれほどでもない。本編既読で★4、未読で★2、平均★3、みたいな。

4840241244れじみる。Junk (電撃文庫 ふ 7-15)
藤原 祐
メディアワークス 2007-12-10