「征服娘。」

「醜い?それは誰が決めたんですの?自分?」
「周りですよ。世界中が」
「私は?私は醜いですか?」
「君は美しい」
「どうしてそう思うのですか?世界が決めたから?それともあなたが思うから?」
「どちら?」
「私がそう思うからだ」
「私が美しいかどうかを決めるのは夫になるあなただわ。他の人がどう思うかは私には関係がない。そう思いませんか?」
「そう、かもしれない」
「では、あなたが醜いかどうかを決めるのは妻となる私ではないですか?」
「ええ」
「では、あなたは少しも醜くないですよ。私が醜くないと思うのだから醜くないです」


「だからあなたも自分を醜いなどと言うのはおよしなさい」


あらすじ

名門貴族の末娘として生まれ、今までなに不自由なく暮らしてきたマリア。
だが、彼女にも一つだけ不満があった。今の世の中では結局「女はなにも手にできない」ことである。卓越した才覚を持っていても、貴族としてゆくゆくは嫁ぎ、子を産み、サロンでの談笑に興じるだけ。そんな人生はまっぴらごめんだ!
そんな不満を抱いていたマリアは、満を持して侍女のアッシャと共にある計画を実行に移す―この国の実権を握る計画を。だが、時を同じくしてマリアの結婚話や、ライバル関係にある国が不穏な動きを見せはじめて―


続き…ちゃんと出してね?

大正野球娘。』の神楽坂淳の新作。「男もすなる***といふものを、女もしてみむとてするなり」な『娘。』シリーズ?の一環とみていいのかしら。大正〜の続刊が延期になって、今こっちが出るのって引き抜きとか何かしらあったのだろうか…
内容。13歳金髪縦ロールの少女が「世界を革命する力を!」…勿論冗談だが、あながち外れてもいないのがまたw 正確には貴族の末娘がその国の実権を掌握するために、ドロドロの権謀術数を繰り広げるってお話。今回はシリアスです。13歳ロリっ娘が国を支配するって「は?ネタ小説?」と思われがちな所を、全くそんなことを感じさせずに真正面からガチに一歩一歩描いている所が素敵でした。
まぁ、1巻の段階では屋台の争いに決着がついたくらいで、今後目指す所と比べると地味な話の気も。だが、主人公の行動や思想のブレのなさ、周りの登場人物の行動の理由の丁寧な描写、ほどよい伏線の出し方により地味ながら読んで「面白い」お話になっていると思います。この続きが気になる感は最近珍しい。どういう経緯を経て、どこに辿り着くのか。その展開次第では今後更に化けるんじゃないでしょーか。笑顔で首筋にナイフを突きつけたりと、底のしれないアッシャさんの今後の動向にも期待。
架空の世界だがわりとリアリティもあって大正〜でも思ったが、発想から文章に落としこむ能力が秀でている作家さんだと思った。惜しむらくは文章表現に変な所が若干見受けられたのと、あとがきが無いくらいか。…最近の動向が気になるだけに。こっちの続刊はちゃんと予定どうりに出して欲しい所。
4086304023征服娘。 (集英社スーパーダッシュ文庫 (か12-1))
神楽坂 淳
集英社 2008-01