「クダンの話をしましょうか2」

「ねえ、香奈…あなたが忘れてしまう前に、お礼と愚痴を言わせて」
「えっ、なに?」
「あなたが忘れても、私はずっと憶えているから。あなたのことを憶えているから」
「それが……どうしたの?」
「あなたが親切に仕事を教えてくれたこと、忘れないから。おかげでソフトクリーム、上手に作れるようになったよ」
「わ、忘れて……いいよ」
「服を選んでくれたこと、わすれないから。あの服、ずっと大事にするね」
「そんなの忘れていいよ!」
「ケーキ屋さんに誘ってくれたこと、忘れないから」
「だっ、だったら、もう一度!もう一度、友達になればいいよ。私、嫌なこと全部忘れたら、もう一度、あなたと友達になれる。今度は絶対にひどいことを言ったりしない。喧嘩なんてしないから!」


あらすじ

彼女には人の未来の災いが見えた。が、それを当の本人に伝えると彼女はその人の未来から消されてしまう―忘れられてしまうのだ。親しい人間の破滅がわかっているのに伝えずにいることなどできるだろうか?彼女―クダンは自分の悲しい宿命を変えうる存在「鵺」を捜し求めていた。


キリンの話を聞いて、北海道のとある街までやってきたクダン。ここでクダンは喫茶店でバイトをしながら鵺に繋がる手がかりを探していた。そんなクダンのもとに現れたのは、元"コクバン"の管理人・美千恵。彼女は、記憶の中にあるドッペルゲンガーを探しているらしい。

『手のひらに注意』

そんな占いの結果を頼りに街を探索する美千恵。彼女は街のいたる所にひっそりとつけられた手形に気付く。中には何かの目印らしき手形もあった。大人じゃ通れない狭い路地、その先には―


やっぱり地味

なんですが、切なさが余韻として心に残るとでもいいますか。相変わらず「〜〜がいい!」と声を大にしては言い難くても、「なんか良い」って感じでした。
メイン3編、それぞれに主人公?が違うのでまずは別個の感想をば。
尋ね人はドッペルゲンガー
メインは元コクバン管理人・美千恵。
前巻との関連性が…と思ってたらそんなに関係なかったのが残念。地味。舞台背景の説明の意味合いが強いように思えた。


コロポックルがやってくる
メインはバイト先の店員・香奈。
そうなるんだろうなーとは予想がついたものの、実際そうなっちゃうと切ない切ない。クダンが一番輝いていました。あとは、無邪気の恐怖?3つの中では最も印象が強く残った。


鵺の足跡
メインは不登校中学生・琴音。
誰ですか、貴女は。全ての前フリを受けてのコロポックル完結編。予言はしたけどクダン蚊帳の外では…?お話自体は希望の持てる素敵な終わり方であった。


幕間は割愛。いつものノリ。それはそれでいいのだ。
前巻がかなり『コクバン』という存在に依存したお話であったので、それを廃してどんな感じのお話になるのか?というのが個人的に気になる所でした。が、結論から言うと「あまり変わらず」。ネットの掲示板と、街中に溢れる謎の手形。両者は一見かなり異なる物なのだけど、結局どちらも自分を取り巻く集団との意思の伝達手段という点では同じ。そして、それらを媒介にした他人とのコミュニケーションによる問題の発生。問題の転換点と成り得る件の予言への人それぞれの反応、って基本構成が同じだからでしょうか。付け加えると、メインの話による事態の発展の順序や、物語の最初と最後を結ぶ伏線って辺りも踏襲してるかもしれない。
まぁ、変わっても変わらなくても結局読んだ人が面白ければそれでいいのだけど、今回は残念に思う所もあった。クダンの影が薄いこと。予言をしてるし、いなくちゃお話は進まないのだけど予言をする相手との関係の浅さが主な問題か。予言をすることの重さが感じられなかったり、ストーリーがクダンを置きっぱなしにしてる印象も。2話はストレートで良かったのだがね。毎回あんな展開も困るので、もうちょっとクダンを能動的に動かすといいんでないかなぁと思った。総じて、2巻を読んでみて、期待してた物がきたと思うか変化が無くて残念と思うかは微妙な所?

あとがき

はフーンと思いつつ読んでたのですが、他所の感想を読んでたら不穏な事が書かれていたので焦って確認。
「最後までおつきあいをいただきました」とか書いてるよ!
しかもあとがきの後にイラストあって男坂な雰囲気を醸し出してるよ!
…これは、確定ですかねぇ。
4840121281クダンの話をしましょうか 2 (2) (MF文庫 J う 3-6)
内山 靖二郎
メディアファクトリー 2008-01