「銃姫9」

「 人 形 ――じゃ ――ない 」
「私は、生きているの。ずっとずっと、生き続けているの。彼に出会ってからは、熱を感じたわ。指先に、血潮が巡るのを確かに感じたわ!」


あらすじ

チャンドラースの策略でスラファト軍をあと一歩の所まで追い詰めた流星軍。だが、予想もしない所から灰海に侵攻してきたスラファトの援軍により戦局は一変、流星軍は本拠地への必死の撤退をする状況に陥ってしまった。
その中で瀕死の重傷を負ったセドリックを助けるために、ミトは危険を承知で銃無しで魔法を使う―そして、セドリックの目が覚めた時、ミトはいなくなっていた。回復しきっていない体でミトを探しに出たセドリック。ほどなくして彼は見つかるが…

「誰だ、貴様は」

それは、最悪の瞬間に目覚めた、彼の真の敵との出会いであった。
傷を負ったまま、竜王と対峙するセドリック。彼は生きてこの場を切り抜けられるのであろうか―


可愛いよエル姉可愛いよ

本格異世界ファンタジー久々〜の続刊。8巻出たのが2006年の11月だったから…ぉぉ1年と4ヶ月ぶりだ。9巻の冒頭で初めて知ったのだけど、どうやら作者の高殿さん、出産されてたようで…そりゃ1年以上間が空くわな。とにかく、おめでとうございました!


で、押入れから引っ張ってきて見るに「ナイス引き!」って具合にいい所で終わっていた8巻。そして今回待望の9巻ですが、まず目に付くのがこの表紙。エル姉の花嫁姿ですよ!清楚なドレスに満面の笑み、エナミさん超GJ…なんだが俺はいまだかつてこれほど不吉な雰囲気を湛えた花嫁姿は見たこと無いかもしれない。ある意味、「まさかお亡くなりに?」とか考えられる程に。いや、だって本人アレだし。8巻の終わりの状況から1巻で想い人(他に恋人アリかつ義理の弟)とゴールインってどんな超展開だよ、ありえねぇよ、と。
まぁ、杞憂でした。エル姉死んでなかったよ!なんで表紙が花嫁姿なのかわからないけど、純粋にサービスかね?主人公なのに表紙に出てない人を差し置いて2回目の登場だったりするし
今回は灰海戦メインで出番少なかったのが残念だったけど、その数少ない場面が極上の魅せ場。本性を晒すのを恐れないでセドリックの為に戦う姿は格好良いやら健気やらで…改めてエル姉最高だわ。セドリックが真実を知っても「一緒にいて」と言うシーンなんか個人的には9巻ラストより良かったよ。
だが、そんな綺麗な落とし所でまだ終わっていないのがエル姉の真の魅力。セドリックとの関係は姉弟、だけど家族愛の範疇に収まりきらないその一途さといったら!本人は「毒電波シスター」やら「死を呼ぶ魔のカナリア」等と揶揄される程の音痴だが、生きてる物とそれが奏でる音が大好きで…ある意味とても純粋。彼女にとって愛されるというのはその人の唯一のものになること。その純粋さ故に愛の違いがわからなくて―
弟が好きな人が出来たと教えてくれる

「弟の想い人みたいになればより愛される!」

弟の想い人を虱潰しに観察して彼女になりきろうとする

「まだ、彼 女 に な り き れ て な い」←今ココ!
…なんかふとした拍子に弟の彼女のことを殺しかねないよ?
お話の流れ的にヒロインはアンブローシアっぽいのでそれは無いと思うのだけど…未遂はあったりして。優しい姉ってだけじゃなく、そんな暗い危うさと純粋さを同居させてる所が大変に壷なのです。アンとの別れ際にセドリックがやったことを、エル姉に対してしちゃったらどんな反応を見せるかとか想像するだけでドキドキなのですよ。セドリック×エルウィングは無いだろうが、あったらあったで非常に魅力的だなぁ。どんな展開やらだ。考えてみれば姉弟っても血の繋がりないから平気か…まぁエル姉人間ですらないんですが。
アンを初めとして、キトリ(故人)やら最近ではアラベスカやら意外にフラグをたてまくってるセドリックですが、エル姉のフラグは死亡フラグでないことを望むよ。…なんか、誰かを庇って死ぬとかとってもありそうだけど。

4840121435銃姫 9 (9) (MF文庫 J た 4-9)
高殿 円
メディアファクトリー 2008-03