「七姫物語 第五章 東和の模様」

「よくここまで来ました。褒めて差し上げましょう」
「よく逃げずに居ました。褒めて差し上げましょう」


あらすじ

七宮カセン都市の宮姫である空澄姫は、四都同盟締結の為に招かれて五宮と六宮の双子都市へと馳せ参じた。五宮浅黄姫と六宮萌黄姫とは初対面であったが、双方温和な人柄ということもあり四都同盟は友好的な雰囲気の内にまとまることになる。
一方、大都市である一宮と二宮は、ここにきて双方の争いが激化の一途を辿っていた。当初は一宮の圧勝かと思われたチドリでの戦いだが、二宮への協力者―中原の王子が壮絶な火計を用いて一宮を退却させたためだ。
協力する小中都市と疲弊していく大都市。四同盟側はひとまず安泰に思えていた。だが一宮はそれでは終わらない。四都側の交通の要所である自治都市ツヅミになんらかの策を用いようとしていて―


空澄さん今回無難にまとまり過ぎ

ひっさびさの続刊。確認してみたら前回が2006年の9月だったから…1年半強か。出産とか何も無しでこれは…確かに希に見る遅筆。おかげさまで内容も忘れてたので、書庫から前巻引っ張り出してきてさらっと復習もしてみたり。
で、ぱっと見の見た目の感想ですが…空澄姫が必要以上にロリぃんですけど。拍子も結構…なんだが、1ページ目で更に確信を得る。男連中や一と二はそう違和感無いのだが五六七、加えて三辺りのこの丸っこさはなんなのだ。そして前からこんなだっけ?と思って前巻を見ると、そうでもない。人は同じでもイラストのタッチが変わってた。やはり1年半という時間は長かったようだ。イラストに関しては、自分は前のが好みかな。白黒はあまり変わりない気もするんだけどね。
内容は、イラストとは対照的にいつもの調子で一安心。都市間の覇権争い…ある意味戦争を扱ってるのに血生臭くない独特の雰囲気。覇権争いとは対極の存在である「宮姫」を(七人も!)抱えつつも、それを無下にすることなく、かといって万能というわけでもなく。理想(宮姫)と現実(実際の軍事力とかとか)を上手く絡めて実にしっかり戦記物してたと思います。戦闘メインじゃない戦記物ここにあり。
しかし、やっぱり「七姫」という時点でかなり勝負が決まっていたんじゃないかなぁとも今になって思うのです。姫。乱世の「英雄」ではなく「宮姫」。で、当然の如く美少女揃いでしかも二つ名で呼ばれたりして。己の信念や目的の為に権謀術数を用いたり逆に真っ直ぐに物事に立ち向かったり。これはもえるよね!(漢字はどっちでも) 今回は内容結構詰め込まれてて展開が早い側面もあったけど、その中で印象に残ってるというか心が震えたのが四都同盟成立と、"あの人"帰還と、「褒めて差し上げましょう」×2辺りで御察しください。今回は、直接関係なかったせいか人物像がよくわからなかった二五六辺りの描写が厚かった(特に二の字が)のも良かったかも。今までが七メインで一と三少しずつという感じだったので、これで今後の展開にも期待が持てるってものです。
そして、カラさんカラカラさんの出番が少なかったのに色々と思うところが。空澄姫がほぼ最初っから最後まで式典+他の姫の描写にページを割いてたので仕方ない所ではあるのだが。空澄姫も、完璧にお役目をこなしていたかと言われると所々地が出てたり"らしい"反応があったりするものの、カラさんの時とか七宮の例の二人組と絡んでいる時とくらべると実に無難で。自分の立場に自覚が出てきたと言えるかもしれないし、それは好ましいことかもしれない。が、この先二人組の計画が順調に進んで天下を取ることに関わってきた場合、他の宮姫と知り合った今の空澄姫は今までと同じくあの二人組みとの関係を続けていくことができるのか?別離の可能性は?今回ほぼ姫スタイルで二人組と距離を取ってたのでそんな予感がしなくもなく少し不安に。それはそれで面白い展開だとは思うけど、やっぱり7宮組は最後までカラさんに納得のいく形での共犯であって欲しいなぁ。
いい場面で終わり、物語自体もそろそろ〆に入るとのことでやっぱり続きが気になるのだけど…今年は無理かなw
4048670182七姫物語 第5章 (5) (電撃文庫 た 15-5)
高野 和
アスキー・メディアワークス 2008-04