「龍盤七朝 DRAGONBUSTER 01」

「お主はすごいのだ!世の男どもをすべて合わせてもお主には及ばん!妾は来る日も来る日もお主のことを考えて剣を振っているというのに、お主にそんな平気な顔をされたらこれ以上どうすればいいのだ!」


あらすじ

虐げられる民"言愚(ゴング)"の青い目を持つ涼孤(ジャンゴ)は似顔絵描きと講武所の下働きで糊口をしのぐ。講武所では下男として雑用に身を窶す毎日だが、彼はかつて素性の知れぬ老婆から剣を習い、彼女の双剣を受け継いでいた。
卯王朝、第十八皇女の月華(ベルカ)は屋敷を抜け出しては市井を探検する。ある日、夜の街で道を見失った月華は偶然にもどぶ川の畔で剣を舞う涼孤の姿を目撃する。その剣舞の美しさに一目惚れした彼女は自らも剣の稽古を始めようとするのだが―


この巻だけだと微妙

猫の地球儀』や『イリヤの空、UFOの夏』の秋山端人、これまた久々の新作。
中華っぽくて武侠っぽいバトル物かしら?この作者にしては珍しい設定だと思う。同じ設定を用いて古橋秀之も系列作品を出すらしいのでそっちにも期待したい所。っつーかこの設定で古橋秀之だと『Ⅸ(ノウェム)』思い出しますわ。あっちほどガチ武侠じゃないみたいだけど…
ぶっちゃけ序を読んでる間は「期待外れ?」とも思ったし、前半も「うーむ」といった具合ではあったけど後半で持ち直した印象。
文章はやっぱり上手いし、設定とかも凝ってるのはわかるのだけど、ちと無駄に悠長に過ぎるというか凝りすぎといいますか。特に序は、開始直後で右も左もわからない内に大変な状況で…殺陣の格好よさというのはあったかもだが、お話として面白いかと言われるとそこに限っては否だ。若い頃の爺さんが双剣に殺されかけたくらいしか認識できなかったりで…。本編開始後も月華と涼孤が出会うまでは、設定関連を消化している感じで割合淡々としていた感じ。普通。だが、月華が涼孤の道場の場所を突き止めて直接接触してからは、ぼちぼち面白くなってきたと思う。やっと物語が動き始めたような。ベタっちゃベタですが、高貴な身なのに素直に行動する月華の一直線っぷりは微笑ましいし、彼女を悪くは思っていないものの素直に迎合しない涼孤の取る初期の行動に作者らしさが垣間見れてよかったかなーと。相変わらずいい所で切りやがりますしっ!
バトル物と言いつつも本編は戦闘要素少なかったし、伏線も張りっぱなしだったりで露骨に今回は準備の巻なのだなぁとも実感。そりゃ1巻だけなら微妙にもなるわ。続きは、おとぎ話の例えからすると結構切ないお話に…?このお話自体は次で完結しちゃうらしいので生暖かく見守りたい。
…個人的にはあとがきで触れられた超古代エロエロ呪術戦記『毒娘』が大変気になるのですけど。
4048670271DRAGONBUSTER 1 (1) (電撃文庫 あ 8-13 龍盤七朝)
秋山 瑞人
アスキー・メディアワークス 2008-05-10