「“文学少女”と神に臨む作家 」

「……遠子先輩は、最後まで食べてくれましたよね」
「ぼくが書いたものを全部、残さずに、いつも食べてくれましたよね」


あらすじ

3年生の卒業も間近に迫ってきた2月のこと。ひょんなことから、ななせが次の日曜に心葉の家に遊びにくることになった。それだけならいいのだが、遠子先輩も前日の土曜日に家庭訪問に来ると急に言い出す始末。心葉の家族の微妙な態度から遠子先輩が前日にきていたことを知ったななせは最初は機嫌を損ねていたが、誤解も解け次第にいい雰囲気に。だが、そこで櫻井流人が突然の来訪。しかも、彼は心葉とななせが付き合うことを邪魔するような態度を取り始めて―そして一言。

天野遠子は消えてしまう」

“文学少女”天野遠子に秘められた謎とは?


ちょとsYレならんしょこれは・・?

短編集(今日のおやつ?)と外伝も出るみたいですが、待望の本編ラストエピソード。今回のお題は『狭き門』でした。
『月花を孕く水妖』での衝撃的な結末を受けて、さてどうなる…?といった具合でしたがここにきてシリーズ初の上下刊行に。まぁ下で完結なので仕方ないのだろうけど、それにしたってちょとsYレならんしょこれは・・?的内容にポジティブな不満感が。
このお話の面白いところは勿論登場人物の心理描写が上手いのもあるのですが、それと同時にネガティブで身動きがとれなかった問題が物の見方一つでするっと良い所に収まっていくカタルシスってのがあると思うのです。太字部分のミスリードの正解然り、元ネタとの類似点or違う点にしかけられた罠然り、文学少女の本についての熱いトーク然り。今回、上下巻構成ということで問題提起だけしちゃって解決なしで終わってるので、その辺りが少々不満の原因。
あと今回全体的に負の方向の雰囲気が漂っていて、それが最後まで持続していたこともあるのかな。最初こそ、初々しいお話とかでのほほんとしてましたが流人が訪れた辺りから不吉な空気が漂い始め、終始それに怯えていたような印象が。出口の見えないお化けやしきとでもいいますか、気の緩む暇が無かった。普通に見ると微笑ましいはずの心葉×ななせのお付き合いが酷く脆そうに見えてしまって。状況が負のスパイラルに陥ってもいつもは遠子先輩がどうにかしてくれる場面が多かったのですが、今回彼女も当事者側でなす術も無く。…ここは心葉がしっかりしてくれないと駄目だと思うんだが、前々回のラストはなんだったんだと思うほどのヘタレっぷりは何事なのだ。
美羽の時もかなり怖いとは思ったが、今にして思うとヤンデレでまだデレてる分マシだった気がする。デレがない病んでるだけの今回の流人君はマジ恐ろしい。何度も書いてるが洒落になってない。更に「生まれ変わり」とか「琴吹さん、邪魔っすね」とか今よりギア上げたら今後どうなっちゃうのかと。色々な背景が明らかになる毎に混迷を深めるこの状況にどう決着がつくのか。下巻が非常に待ち遠しい…んだがまだ未定なのですねぇ。
なんとなーくこの状況はレイニー止めを思い出す。

■感想リンク■

4757741731“文学少女”と神に臨む作家 上 (ファミ通文庫 の 2-6-7)
竹岡 美穂
エンターブレイン 2008-04-28