「耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳」

「ワジ、彼らを足止めするのに武器は必要ない。たとえば、そうだな……女子の体操服を床に敷きつめて平泳ぎ、というのはどうだ?彼らとのトークが広がるし、何より夜の教室の光景としてもっとも自然だ」
自然だけど変態というジレンマ。それがあなたを更なる高みへと誘う
「シャーリックはそんなことしない!」


「いいこと思いついた」
「ワジとレイチがおとりになる。夜の教室で密会していたという設定で。なぜ教室かというと、寮塔にはサンガがいるからなの。彼はとんでもない淫乱ボディの持ち主で、来る者拒まずなのね。でも、彼の部屋で日夜繰り返される肉欲の宴に唯一参加してなかったのがワジ。なぜなら彼は密かにレイチのことを……」
「シャーリックはそんなこと絶対にしない!」


あらすじ

『本地民』のレイチは連邦の要職に就いている親のコネで今年から連邦第八高等学校―通称:八高に入学することになっていた。
八高は特に優秀な本地民や周辺地域の王族など、選ばれた人々が集う連邦内でも屈指の学府である。そんな環境の中、自分は趣味の農芸でもやって慎ましやかに生きていこうとするレイチ。だが彼の計画はクラス分けの時点で頓挫することになる。八高十一組。耳を刈るという蛮習を行う王国の王女とその一味、女ったらしの旧王、頭に変な飾り物をつけた三人娘等等奇人変人が勢揃い(本人含む)。しかも、彼自身がなる気もやる気もなかった自治委員に選ばれてしまって―


人を選ぶなぁ…

第10回えんため大賞「優秀賞」のもう一人の新人さん。…どっちも読んどいて今更なんだが「夢双旋風」で「だぶるどりーみんぐばーすと」ってのは正直どうなんだ。
タイトルで[★★★★☆]or[★★☆☆☆]ってやろうとして通らないことに気付く。妙なバランスで結構好き嫌いが分かれる作品かと。個人的には面白かったので★4でおkって感じだが、これは当てにならないと思うんだぜ。
あらすじやらタイトルやら押絵やら最初の数ページやらで「その場のノリで突っ走る不条理系コメディかなー」と感じていた私。が、これは微妙に間違っていて実際の本筋は「わりと真っ当な学園青春物(ただし妄想インターバル含む)」で驚いた。中央の本地民メインの『自治委員』と辺境の王国民メインの『学生防衛隊』が学園内で冷戦を繰り広げる環境。そんな異文化同士の軋轢がある中で時には環境の違いから反発しつつも、鬼教官対策の勉強会等で次第に打ち解けてゆく十一組の面々。予断を許さない状況の中、最終的にはそれぞれの立場を超えて『友人』のために動き出す――ってこれなんて青春。本筋だけならベタかもしれないけど、やっぱりこういうお話は読んでて心温まる物だと思うのです。キャラも結構いい感じで、特にナナイさんの可愛さはガチ。普段は強面だけど、実はとっても純粋なデカ女ってなにその無敵設定。あと▽の言動には(レイチの相方として)無限の可能性を感じ得ない。
で、本筋関連は基本的に良かったとして、問題になるのは主人公の妄想癖。展開に関わり無く突然挿入される厨二的妄想+ネタ群。個人的には、既に何かに毒されてるので面白かったんですが。「固有名詞」をあんまり多用しない方向での純粋な妄想ネタが多かったのが良かったかな。ただ、「肌に合わない+理解できない人にとって、突然挿入されるイミフな文章って何なの?sinr」ってことですな。ネタをネタとして割り切って理解しないと、前後不覚に陥る気がします。…そして冷静に考えると本筋に妄想成分あんまり関与してない気も。むぅ。



個人的には今回の優秀賞作品だとこっちのが本筋が面白い+妄想ワロタで結構評価高い気もするのですが、人によってはネタ部分が+評価どころか-評価になりかねない危険を伴う、2刀流の諸刃の剣。素人にはお薦め出来ない。まあお前らド素人は、『ギャルゲヱの世界』でも読んでなさいってこった。でも、こっちもこっちで人を選ぶなぁ…

4757746474耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳 (ファミ通文庫)
うき
エンターブレイン 2009-01-30