「アクセル・ワールド1-黒雪姫の帰還-」

「聞け、六王のレギオンに連なるバーストリンカーたちよ!!我が名はブラック・ロータス!!僭王の支配に抗う者だ!!」
「我と、我がレギオン《ネガ・ネビュラス》、今こそ雌伏の網より出でて偽りの平穏を破らん!!剣を取れ!!炎を掲げよ!!戦いの時――来たれり!!」


あらすじ

デブでいじめられっ子の中学生・ハルユキ。ゲーム以外に取り得の無い彼は学校でも毎日のように同級生に蔑まれ、いいようにこき使われていた。そんな彼が唯一安らげる時間は、学校内ローカルネットに配置された地味なスカッシュゲームをプレイしている時だけ。
だが、そんな彼の才能に目をつけた人がいた。《黒雪姫》と呼ばれる彼女は、生徒会の副会長を務めていて校内でも屈指の有名人である。

「もっと先へ……《加速》したくはないか、少年」

違いすぎる立場故に、胡乱に思いつつも彼女の申し出を受け呼び出しに応じるハルユキ。多くの人の視線の中、『直結』した彼女が転送したのは《ブレイン・バースト》という思考を加速させるプログラム。だが、それは彼を否応無しに《ブレイン・バースト》所持者同士の戦いに巻き込んでしまって―


謙虚なナイトは9レベルで良い

第15回電撃小説大賞「大賞」受賞作。一応新人さん…?
そもそも《黒雪姫》とか、『姫を護る騎士』で《バーストリンカー》とか、中二病テイスト全開な固有名詞。加えて、オンライン対戦格闘ゲームが題材ということもあって「今年の大賞は去年と違ってチャレンジャブルだな!(表紙の絵的にも)」と思っていた時期もありました。が、読み終えてみたら意外に正統派の面白さ。
設定はともかく、展開はベタと言えばベタなんだが…作品中の各方面のバランスが良かったのだと思う。燃えと萌え然り(萌え要素は黒雪姫が一人で頑張っていたような気もするが)、派手なアクションと堅実な心情描写然り。基本はやっぱりオンライン対戦格闘のゲーム小説で、対戦シーンや細かい設定等、物語上で大きなウェイトを占めているのは事実。けど、それに負けないくらい人間関係の描写もしっかり描けていたのが良かった。各要素の相乗効果。そりゃ「ラストバトルで主人公の真の能力が覚醒!⇒大勝利!」とか盛り上がるかもしれないけど、ご都合主義だなぁと思えることも多々ある。でも、このお話の場合ハルユキの成長っぷりがちゃんと描かれていて、そんなことはなかった。それが嬉しい。
一捻りしてると見せかけつつ、実は中身は正統派だったりで総合的な「大賞」に相応しい作品だったと思う。14回に引き続きライトノベルかくあるべし、のような。いきなり「01」なので続きもほぼ間違いなく出るのでしょう。なんかweb小説で連載してたのも文庫化されるみたいだし、新人としては希に見る展開の早さだねぇ…。


あと『ブラック・ロータス』って名。馴れ合いを許さずガチで頂点を目指すって「Adds 3 mana…」のアレを思い出したじゃないか。懐かしすぎる。…同時にどっかの高速道路男も思い出してしまったがな!

4048675176アクセル・ワールド〈1〉黒雪姫の帰還 (電撃文庫)
川原 礫
アスキーメディアワークス 2009-02