「アカイロ/ロマンス5 枯れて舞え、小夜の椿」

「ねえ、霧沢くん。……女の子が男の子を好きになるのに、理由なんてないのよ」


あらすじ

鈴鹿党首の証でもある宝刀【つうれん】を繁栄派に奪われ、親友だった歩摘も敵になった。さらに、「母が姉を手にかけていた」という忘れていた記憶が枯葉の存在意義を揺さぶりにかける。枯葉の落ち込む様子を見かねた景介は元気づけようと彼女をデートに誘うが、こんな状況下で2人っきりで行動出切る筈もなく、結局全員集合してしまってデートはぐだぐだに。それでも、いい気晴らしになったようである程度元気になった枯葉に景介は安堵する。だが、そんな最中にも繁栄派の計画は進行していて―


黒い太陽が本気出してきた

表紙の太股といい、序章と(最終章と)いい、依紗子さんが全部掻っ攫っていった感のあるこの5巻。一言で言い表すならば恐るべき伏線回収巻、ということになると思う。
シリーズ開始当初こそ、衝撃的な設定で「やべぇ…このシリーズやべぇよ…」とか思ってました。が、それ以降、良く言えば道を踏み外さず、悪く言えばのらりくらりと危険な展開とネタバレを回避しつつ、今に至ったこのシリーズ。終了間際のここにきて、今までの伏線を回収しながら急転直下の展開の嵐ですよ。
しかも恐ろしいのが、状況自体は二転三転しているものの、主人公サイドにとっては、悪い方向にしか自体が進んでいないという事実。幼い頃の美談とか、喪着の整合性とか、どうにも不穏な空気を孕んでいた部分は伏線として確かにに残ってたんですよ、でもそれをここで負の方向に連続して叩き込まなくても…と景介達が可哀想になってくる展開。実は黒幕は…でした!で既に枯葉にかなり深刻なダメージがいってるのに、よりによってここで行方不明の姉は…でした!とか「もうやめて!景介のライフは0よ!」と言いたいです。が、そこで自分の恋心の為に繁栄派から離れて独自行動をとる依紗子さん。悪質なヤンデレだと思って悪かった!やっぱり最後は愛に生き、愛の為に死すのね!とか思ってましたが…あああああああああ …そうですねー…そりゃそういう行動とりますよね…すごく納得できる行動理由です…。まぁ、愛の為にってのは間違ってないのだけど。
序盤でコメディ調のデート展開を仕込んできて、上げて↑落とす↓小技も効いていて、読み終わったときの衝撃度はシリーズ髄一でした。電撃の黒い太陽がここにきて本気出してきた。次の6巻で完結らしいのですが、ここからハッピーエンドって可能なのかよ…?あんまり伏線残ってないだろうし、ハッピーエンドにもっていくならホライゾンクラスのページが必要な気がするが。もしかしてもしかするとバッドエンド風味もあったり?
しかし、歩摘が完全に他の人のいいなり状態なんですが、調教って依紗子さんはいったい歩摘に何をやらかしたのだろうか。
4048679414アカイロ/ロマンス〈5〉枯れて舞え、小夜の椿 (電撃文庫)
アスキーメディアワークス 2009-08-10