「魔よりも黒くワガママに魔法少女は夢をみる」

「今さら言い逃れなんてひどいです。あんなことまでしておいて……」
「あ、あれはその、仕方なくだったんだから。陽守の痛みを和らげるために――」
「痛みを……?何でキスをすると和らぐんですか?」
「いや、あれ?何でって……あれ?痛み消えてなかったの?」
「はい。だって、痛かったですし」
「でも、初めては痛いものと言いますし、――る、瑠奈さんのお気持ちは、それはそれで嬉しくないわけでは……」
「……あの、陽守?」
「か……勘違いしないでくださいね!?私はあくまで責任を取っていただきたいだけで……!」


あらすじ

高校生になってまで魔法少女のアニメを観てる「以外は」普通の女の子の望月瑠奈。学校からの帰りが遅くなったある日、瑠奈は近道をするために通った公園で魔界の王子と名乗る黒い喋る馬・オロバスと遭遇する。「ボクと一緒に戦ってください!」→「いやお前が滅べよ」速攻で申し出を断る瑠奈。だがそこにオロバスを狙って神族が襲来。否応なく戦いに巻き込まれた瑠奈はオロバスが持ってきた魔装儀甲を使うハメになって―「瑠奈さん、今日から『慟哭屍叫セレンディアナ』です!!」


色々な要素てんこ盛り

第12回えんため大賞特別賞の新人さん。今が結構旬な感もある魔法少女ネタ+タイトルの略し方に惹かれて購入。『魔ママ魔』とか素敵じゃん?
魔法少女+バトル物+グロ+ライダー+百合 と書くと最近話題の何かに似てる気もするが実際に読んでみたら全くそういうことはなかった。…あっちはグロというか欝な気もするが。瑠奈とオロバスの適当な性格と、あくまで軽く描かれている微グロ描写のせいで全体的にはコメディ風味で最後まで気楽に読めた。ネタ的には色々な要素があって飽きずに楽しめる
が、気楽にというかバリエーション豊かな元ネタってのが影響してか最後まで読んでも特別「ここが凄い!」と言える所が無かったのも事実。コメディ的に面白いシーンもあったし、バトル展開も頑張って描いてると思うし、百合百合しいシーンも美味しゅうございましたが、それぞれがそれなりの質と量に収まっていて突出していないために全体としては非常に素直なライトノベルという印象で止まっているように感じた。
続編があるのなら内容をもっと何かに寄せた方が面白くなるような気がする。個人的には吸血百合寄せだったら歓喜。あと展開自体はオーソドックス+絵にすると映えそうな場面が多いのでアニメ化とか向いてるんじゃないかなー。
4047270784魔よりも黒くワガママに魔法少女は夢をみる (ファミ通文庫)
根木 健太 kino
エンターブレイン 2011-02-28