古橋秀之

「冬の巨人」

「新しい土地に落ち着いたら……もちろん、何年かして、食べるものや着るものが充分にそろってからですが――」 「――薔薇の育て方を、教えていただけませんか」 果ての無い凍土を歩き続ける異形の巨人「ミール」。その背中に作られた都市は、そこに住む人々にと…

「Ⅸ(ノウェム)」

罪炎はふところからなにかを取り出し、軽く放ってきた。燕児が受け取ったそれは、銀のかんざしだ。高価なものらしく、紅玉が埋め込まれ、凝った細工が施されている。罪炎の真意を測りかねて、燕児は怪訝な顔をした。 光る目をうかがいながら、そろりと持ち上…