「“文学少女”と穢名の天使」

「一冊の本から生まれたファントムという人物が、新しい命を得て、世界に広がり、新しい読者が生まれ、想像が生まれ、また別の物語が生まれていったの。みんなの想像が、ファントムをよみがえらせたのよ。
それほどファントムは愛されているし、これからだって愛され続けるわ。ファントムにも、この物語にも、それだけの魅力がある。でもね――」
「それは、『オペラ座の怪人』を最後まで読まなければ、わからないのよっ!」


有名文学作品を題材にしたミステリ風味の物語第4弾。今回は『オペラ座の怪人』でした。
クリスマスも間近の12月、"文学少女"の遠子先輩が受験を控え突然の休部宣言。そんな中クラスメイトの琴吹ななせに懇願され、失踪した彼女の友人を探すことに。「わたしの先生は、音楽の天使です」そう語る彼女の失踪に隠された真実とは―


面白かったんだけど…
前巻のあのラストを読んで、美羽が絡んで物語が大きく動くことを想像してただけに肩透かしを喰らった感じが。有名な文学作品に準えた事件が発生、二転三転する人間関係の中自分の過去と向き合っていく心葉、文学少女の語りの後、追加でさらに一転して終了といつもの"文学少女"クオリティ。題材となった作品の筋通りにお話が進むと思わせつつ、読者の予想を裏切る展開を経て綺麗な結末、かつ全体のストーリーの進行すらしてみせるその構成はお見事。…なんだけど、流石に語り手が不明瞭な太字の文章部分のミスリードを利用したその構成も4回目になるとなんだかなぁとなるわけですよ。特に今回は激動の本編を期待していただけに。
ななせ関連の数々の心温まる出来事に多少救われつつも、美羽の絡みがとってつけたような物だったり、臣君の言動が今ひとつ理解不能であったりと個人的に途中までは「…失速?」と思えたことも事実。だが、最後の最後でやってくれました。心葉が今まで気づきたくなかった事実に向き合うきっかけ。失踪事件自体は7章で終了。残り8章とエピローグは後日談というか種明かし風味ですが、ぶっちゃけ8章以降を書きたいがために今になって本筋に関係ない失踪事件を描いたとも思えたり。引用した台詞の後、犯人への恒例の説得が始まるのですが、実際に原作もかなり終盤まではファントムに感情移入するのは難しい気も。その辺りの含みは流石"文学少女"の面目躍如という所でしょうか。正に最後まで読まなければわからないと

4757735065“文学少女”と穢名の天使
野村 美月 竹岡 美穂
エンターブレイン 2007-04-28