「“文学少女”と慟哭の巡礼者」

「八歳もサバ読んで、なんにもできないふりして、井上を引き止めて、甘えて、縛りつけて、苦しめて、それで満足なのっ!あんた、やっぱり最低だっ!」
「指も満足に動かせないやつが、いつもさらさらの髪で、きちんとした格好して、いい匂いさせて――!お、女には女の嘘なんか、バレバレなんだからっ!」
「――っっ!」
「あなたに、なにがわかるのよっ!コノハは、昔からあたしのものなんだからっ!」
「そんなこと誰が決めたのっ!井上は、あんたの犬でもモノでもないっ!」


あらすじ

クリスマスの一件以来、お互いの距離が少し近づいた心葉とななせ。
一緒に初詣に行ったり、映画を観に行く約束をしたりと二人の仲は順風満帆…のように見えた。だが、約束の日の前日に突然キャンセルの連絡を受ける。本人からは伝えられなかったが、聞く所によると階段から落ちて怪我をしたらしい。心配になってななせのお見舞いに行く心葉。
しかし、病院で彼は予想もしなかった人物に再会してしまう―かつての想い人、朝倉美羽と。


なんというツンデレ VS ヤンデレ

前巻までが太文字部分のミスリードを多用したミステリ風味だったのに対し、今巻はそれは控えめ(太文字部分はあるにはあるが出所は明らか)でガチで本筋と向かい合ってきた。それでこの作品の面白さが損なわれたかというとそんなことはない。寧ろシリーズ中(現段階では)最高傑作かと!
まずは今まで色々な場所にその片鱗を見せてきては避けられていた心葉×美羽の問題、それに今までの伏線を絡めつつも解決まで完全に描ききった所が心情的に大きい。『穢名の天使』辺りではやきもきしましたから…。
次に登場人物の扱い。その巻限りの登場人物も多かったものの、準レギュラー陣を以前の話を踏まえつつ心葉×美羽の問題に絡ませて且つ解決はいつもの文学少女テイストという構成は素晴らしかった。特に流人と千愛がここまで関わってくるのは嬉しい誤算。
そして何よりツンデレ:琴吹ななせ vs ヤンデレ:朝倉美羽の心葉を巡る女の戦い。まぁーななせは最早デレデレな気もするが。美羽に対して心葉に嫌われようとも真正面から向かって行く様は素直に可愛い。開始当初のあの正にツンデレな状況から考えるとよくもここまできたものだと感無量。
美羽も言動だけ見てると単なる悪女なのだけど、その目的の根っこや本心を知ると途端に可愛く。病んでますが。想いの強さという点では美羽の方が上だったのかしらね。読む前は、ななせ>>>美羽だったが読了後は美羽の株がだいぶ上がった感が。どっちもヒロインに相応しく可愛いよ!
あとななせの「本心はバレバレなんだけど行動がそっけない」に対し美羽の「行動は露骨なのだけど本心がわからない」とか対照的で興味深く思った。意図して書いてるかはわからないけど凄い。
遠子先輩…次の本編でリベンジなるか


未遂ですが

「爪が伸びちゃったの。切ってくれる?」
「え……」
「カゴに、爪切りが入っているから」
「……でも」
「自分じゃ切れないのよ。お願い」


「キスして。コノハ」
「!」
「できるでしょう?」
「だって、コノハは、あたしの犬だもの」

ここでななせ登場


今回最も印象に残ったシーンorz
未遂だったりしますが…勿論足に
台詞だけでなく状況描写もそこはかとなくエロスを醸し出す。
ショートカットの美少女がパジャマでこのシチュエーション…ヤバイ、ヤバイってw

4757736851“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫 の 2-6-5)
野村 美月 竹岡 美穂
エンターブレイン 2007-08-30