「アカイロ/ロマンス3 薄闇さやかに、箱庭の」

「どういうつもり?」
「どうもこうも。英の言った通り、偶然ですよ」
「誤魔化さないで」
「くだらない冗談に付き合う趣味はないわ」
「まったく……昼間と別人ですね」


「…………えっくん」
ぼそり、と呟いてみた。
「……っ!」
攻撃命中。


あらすじ

ある学校帰りの夕方。景介は聞き覚えのある詩に惹かれて、一人の少女と出会う。彼女は【鈴鹿の一族】―それも景介達と敵対している繁栄派の少女で檻江と名乗った。そして彼女が口ずさんでいた詩は、景介の姉、雅が昔よく諳んじていたものと同じ詩。景介は失踪した姉の手掛かりを掴むべく、檻江に姉のことを聞こうとする。だが檻江は「時間だから」とどこかに行ってしまう。後を追った景介が辿り着いた場所は、地域の総合病院。そこは【鈴鹿の一族】の息がかかった病院で、【一族】を専門に診る部門も存在する不可侵地域とも言うべき場所であった。檻江の診察が終わるのを待つ景介。だが、不可侵地域であるはずの病院にも繁栄派の襲撃の手が迫っていて―


通夜子さんと枯葉さん

1巻2巻とアレな展開が続いてただけに、鬱方面では今回はそんなに衝撃的な展開は無し…つっても明るい話でもないんですが。一族の暗部を担当してきた分家「このはな」が登場してきたり、先代当主の死に関わる秘密の一端にそれとなく触れたりと結構キナくさいお話でした。
だがそんなピリピリした状況下、全ての印象を掻っ攫っていってしまったのが二つ。
まず、通夜子さん。なんだこれ…反則過ぎるだろう?かわいいよ通夜子さんかわいいよ。前巻の時点で、繁栄派でありながら景介達に協力したり、実は相当に強いような描写があったりでかなり印象に残る人物でしたが今巻にてついにブレイク。衆人が沢山いる中「えっくん」ですってよ「えっくん」普段の割り切った超絶クールモードとの差に撃沈です。冷静な時に突っ込みいれられて一瞬揺れて⇒持ち直す様も可愛いね。実は現段階の登場人物で一番乙女ではないだろうか。
次に、枯葉さん…というか『つうれん』。前巻も緊迫した場面でちぇーんそーって「hai!!もっと空気読んでください!」な具合でしたが、今回はさらに(斜め上の方向に)加速。ちょwwww枯葉さんwwwwつうれんになんて物つけてるんですかwwwwww双子の「え……?」は読んだ人なら間違いなく同意できる台詞に違いないと思った。太刀⇒チェーンソー⇒鞭?←今ココ! 状況的に仕方なく、な形態ではありますが、かすり傷一つでもつければいい特性を考慮すると鞭って結構理にかなっているんでは…
以上、二つのインパクトが強過ぎた。そういう方向のお話ではない気がかなりしますが。
まぁ、真面目な方向だと、今回は景介の思考と行動が良かったかな。周りが美少女ばっかりで、かつ唯の普通の人間なんで地味っちゃ地味なんですが、それでもただの人間にできる精一杯を頑張ってやってくれたのが好感触。特に最後の最後はいい所もってった!巻き込まれ、決意して、とここに来るまでに時間がかかってましたけど、これなら主人公としてお話を引っ張っていくのに今後も期待できそうです。


…でもコメディ風味のもやっぱり面白いのな。あとがきの『依紗子、廃屋でひとり遊び』と『棗の演歌オンリーひとりカラオケ六時間』は冗談でなく実際に読んでみたいw ある程度シリーズ進んだら『あかろま』とか出ないものだろうか。

4048676016アカイロ/ロマンス〈3〉薄闇さやかに、箱庭の (電撃文庫)
藤原 祐
アスキーメディアワークス 2009-03-10