「あまがみエメンタール」

「橘地さんったら、よっぽどあなたの胸にご執心なのね。それとも、あなたが噛ませているのかしら?」
「いや……いわないで……」


「んっ……宝生さんっ……まだなの………?」
「まだよ。次は俯せになってちょうだい。背中とお尻を見たいわ」
「えっ?」
「噛まれたこと、あるんでしょう?」


「すごい、すごいわ……橘地さんはどんな体勢であなたのお尻を噛んだのかしら?」


あらすじ

全寮制の小中高一貫校、青嵐女学院。
外界から隔離された環境の中、渡会心音は優等生の猫を被って日々を過ごしていた。だが、そんな彼女には一つの秘密があった。ルームメイトの莉子ちゃんと何年にも渡って続けられた秘密の儀式。莉子ちゃんは今日も心音の柔肌に歯を立てる。だが心音もいつのまにかその淫らな行為に快感を感じるようになって―


とりあえず

どこでも言われてる上に、あとがきでも触れられてますが…
あまがみっていうレベルじゃねぇぞちょっとカニバリズムすら入ってるよ…。


全寮制の女子校で、甘ロリの幼女(見た目は)が巨乳で真面目な女の子のあんな所やこんな所をあまがみしてキャッキャウフフなお話。と、書くと軽そうだが、実際は重い…というか湿った雰囲気のある作品。あまがみが公然の事実だったならば、こうなることは無かったと思うのだけれど実際には秘め事で、噛まれている当人もイケナイことだと理解はしていて。でも噛まれると気持ちよくて…良くないことだとわかっていてもついつい莉子ちゃんを誘ってしまう共依存の関係。禁断の快楽に溺れていく様が、背徳感と閉ざされた女の園って環境がスパイスとして効いていい具合なエロスを醸し出しています。自分で片膝上げてスカートの奥の閨に、甘ロリちゃんを誘う女…って書くだけなら相当なものだなw ついでに級友の皆さんも、ブラのカップを測ってるときに興奮して匂いを嗅ぎ始める人やら、ヌードの撮影を要求⇒押し倒すな人やら変態揃いで。…まぁ心音には負けるんですけどね!そういう普通じゃない百合的なエロさってのは十分によく描けてる。
が、エロ的なドキドキ感は十分にある一方、L・O・V・E!的といいますか正統派なドキドキ感が不足してると思った。病んでる?…のは別に構わないし、気持ちのすれ違いでも全然おk。心音⇒莉子は大前提としても、逆の莉子⇒心音が歪んでいるというか代償行為とでもいうのか。どっちにしろ気持ちの向かう先に心音がいないのが難。百合物の醍醐味ってのは心の交流とか駆け引きとか、揺れ動く感情とかだと思うのですが、今回の場合は心音⇒莉子が最初っから最後まで一通で動きが無いのが単調でよくなかったと思う。最後の最後でやっと莉子⇒心音は成立するけど…その展開も唐突に感じた。寧ろ心音×莉子以外の面子の方が心情的には、らしいと思うのだが。


肉体的にはかなり濃厚な百合だったけど、精神的にはどうなの?っていった具合のお話でした。結構期待値が高かったせいもあるかもですけど。個人的には『幽霊列車』のが好きかなー。

4758040575あまがみエメンタール (一迅社文庫 み 3-1)
瑞智 士記
一迅社 2009-02