紅玉いづき

「雪蟷螂」

口づけは一度。 血の味だけがあざやかだった。 忘れるな、と言った。 私は忘れない。名前の代わりに、この口づけを。 こんな想いは生涯で一度きりだとアルテシアは思った。生涯で一度きりのなんだったのか、幼い彼女にはわからず、そして成長を遂げても知る…

「MAMA」

「でも、もういいんだ」 「使い魔のボクがこんなことを願うなんて、笑ってしまうけどね」 「幸せに、なって、欲しいんだ」 「……先生の、言った、とおりだな」 「……?」 「優しい、子だと」 あらすじ海沿いの王国ガーダルシア。魔術の恩恵によって豊かに繁栄…

「ミミズクと夜の王」

魔物のはびこる夜の森に、一人の少女が訪れる。 額には 「332」 の焼き印、両手両足には外されることのない鎖。 自らをミミズクと名乗る少女は、美しき魔物の王にその身を差し出す。 願いはたった、一つだけ。 「あたしのこと、食べてくれませんかぁ」 死に…