「マリア様がみてる ハローグッバイ」

「ちさとちゃん、以前は長かったんだ?」
……何ですと?
「そっか。その姿も一度見てみたかったな」
……………。
「私」
「ここにいるのは全校生徒の代表で、いわば由乃さんの代わりなんですよね」
「うん?」
「――なんで、この場合一番適当な言葉を返させていただきます」


「『令ちゃんのばか』」


あらすじ

ついに紅薔薇さま黄薔薇さまの卒業式当日。
昨年のハプニングが評判よかったこともあり、今年の送辞は祐巳由乃志摩子の2年生3人組に決定。対する答辞は昨年のリベンジとして紅薔薇さまが担当することに。万事順調に進んで行く卒業式の日程。だが、由乃さんは何やら気になることがある様子?
加えて誰の意図によってか、先代薔薇さま達までがリリアン女学院に集まってきて―


裏表紙のあらすじの「さようなら」って不穏な空気が多少気になったものの、いつも通り読み進めていたら―って。ん?あんまり気にしてなかったが、毎回「了」ってあったかなーと記憶を確認してみたが見覚えは無く。ぇ?終わっちゃった?
と、いうことで本編最終巻になってしまった「ハローグッバイ」です。流石に今回はガチ本編進行で通算34巻目(+2)。卒業式という、学園物としては終わるためにあるようなイベントですし、大きく動くとは思ってたけどまさか完結してしまうとは。
まぁ、このシリーズが祥子と祐巳の姉妹の話であるならば、ここで完結は正しい。由乃の妹問題も一応決着つけて、現段階で残った話も(なんとか)消化されたとは思うけど。…それでも、正直な話「了」がしっくりこない自分がいます。
まず、「最終巻にしては」盛り上がりに欠ける気がするのが一つ。水野蓉子様曰く「卒業式は退屈なものである。つまらなくて結構。」だったりするので粛々と進行するのも風情があって良いのかもしれないが。ただ、1巻終盤の姉妹成立シーン、レイニー明け、延々と続いた祐巳の妹問題決着といった過去の名シーンと比べると、インパクト不足だとは思うのだよなぁ。ハプニング⇒解決ってのがインパクトある展開だとすると、物語まとめに入っているこの巻単体で緩急つけるのは難しいとはわかっているのだけどね。
次に、その「ハプニング」ってのにも関連して、由乃さんの行動。今回のハプニングらしいハプニングは「蜂」と「菜々ちゃんとロザリオ」くらいだと思うのだが、どっちも「由乃さん!もっと空気読んでください!」的に相変わらず暴走してるなぁ…と(特に菜々ちゃん関連)。いつもどうりで面白いのだけどね、ここまできて「いつもどうり」ってのも諸刃の剣とでもいいますか思うところが色々あるわけで…本当に「了」なのかと小一時間r
そして、最後にして最も重要なのが、シリーズの尺の問題。中盤延々と続くように進めながら終わりが計画的にスッパリなのが違和感がまだあるかも。祥子さま卒業で終わる可能性もあるとは思ってましたが、このペースならてっきり祐巳卒業までやるものだと…。と、いうかここで終わると(妹になったばかりの)菜々ちゃんはともかく、瞳子が立場的にも出番的にも、そしてあの長かった中盤は一体何だったの?ということに…ならないか。


薔薇様全員集合とか、由乃さんのスール問題解決やら、冷静に考えると赤面物の「さん」づけ問題やら、1巻冒頭を彷彿とさせる場面やら1冊として見ると見所が多いものの、これでシリーズ「終了」と考えると個人的には色々と思う所のあるお話でした。終了して3年生編ってのは難しいかもだが、短編とかで3年時の話とか出ないものかねぇ…

4086012448マリア様がみてるハローグッバイ (コバルト文庫 こ 7-60)
今野 緒雪
集英社 2008-12-26