「這いよれ!ニャル子さん」

「明日はパン食にしましょう。BLTサンドを作ってきますよ。B・L・T!B・L・T!」
「何の頭文字だ言ってみろ」
「ビヤーキー・ロイガー・ツァトゥグァです」


あらすじ

深夜。コンビニに買い物に行った八坂真尋は帰路の途中で得体の知れない「何か」に追われていた。どんなに助けを求めても応える人もなく、加えていつも使っている見知った道のはずなのに何故かどこまで行っても家に辿りつけない。そして息も切れ自らの最後を覚悟した瞬間―

「いつもニコニコあなたの隣に這い寄る混沌、ニャルラトホテプです」

銀髪の美少女が意味不明なキャッチフレーズとともに現れ、「何か」を一撃の下に屠った!
ニャルラトホテプ改めニャル子曰く、彼女は真尋を狙う宇宙犯罪組織から彼を守るために派遣されてきたというのだが―


良質コメディネタ多目

第1回GA文庫大賞・奨励賞受賞作の新人さん。
萌系ネタコメディは最近多いけど、よりによってネタ元がクトゥルフなんてジャンル的に対極に位置するような物を使うチャレンジ精神にまず脱帽。で、実際に読んでみたら…いい意味で「これはひどい」というのが相応しいように感じた。あくまでも、いい意味でなw
主人公(なの?)がニャルラトホテプことニャル子ということもあり、ストーリーや登場キャラにも「一応」クトゥルフ関連の要素が多いものの、基本的には設定のいいとこ取りでぶっちゃけクトゥルフ知ってなくてもそんなに問題ないように感じた。無論本家の持つコズミックホラー的展開は皆無。ただ、ある程度事前知識があったほうが楽しめるはず。各神性が星人扱いだったり、地球が2次元文化のメッカと化してたり、クトゥルフ神話の由来がやけにユーザーフレンドリーな旧支配者のお茶目だったり…普通に突っ込み所満載だが、原作の暗さや怖さをしってれば脳内突っ込みの激しさは更に増すこと間違いなし。これはひどいwwwって。
あとニャル子さんの行動がいちいちポイント高かった。2次オタの銀髪の美少女で真尋に内心じゅるじゅるしつつ、常にボケを狙い続けるという…空前絶後なキャラではある。が、お話の最初っから最後まで一貫してその姿勢を貫き続けたのが素敵。ブレない。こんな性格でブレないというのもはた迷惑ではありそーだが、ニャル子さんのおかげで変にバトル要素や恋愛要素に片寄らずに最後まで走り抜けれた感はあったと思うんだ。
完全にコメディなのでストーリーは…あって無きが如し程度なものの、クトゥルフベースのネタコメディという意味では完成してると思う。なにより、大爆笑…とまではいかないもののある程度のマニアックさとわかり易さを両立しているネタのセレクトは作者お見事。続編も出るみたいだし、そちらも楽しみです。
4797354143這いよれ! ニャル子さん (GA文庫)
狐印
ソフトバンククリエイティブ 2009-04-15