「銃姫11」

「これで、あなたとずっと一緒でいられる。あなたが死ぬときに、一緒に消えてなくなる。離ればなれになることもない。さびしいと感じることもない。私という存在が、あなたを永遠に生かし続ける。いのちの一部になれる。私は自信をもって言えるの。私は愛された。私は、にんげんになった――」
「私は、ついににんげんになったの。どうしよう。にんげんになったの。もう不安はないの。いまはただ喜びだけ。途方もないよろこび、だけ…」


あらすじ

セドリックとアンの穏やかな日々は思いも寄らない形で終わりを告げた。忽然と姿を消したアンを求めて、セドリックは親友ティモシーを頼りに再び旅に出る。そしてティモシーの口から語られるアンの居場所。アンは竜王ミトとの結婚式の為に"絶対信仰中枢"に今は囚われているというのだ。灰海での戦いにより魔法を全く使えなくなっていたが、それでも自らの身を顧みず"絶対信仰中枢"に向かうセドリック。一方その頃、暁帝国は皇帝の勅による大親制を行おうとしていて―


お疲れ様でした

5年11巻にも渡って続いてきたこの物語も遂にこの巻にて完結。
ボーイ・ミーツ・ガールから始まった少年の成長譚という意味では最初から最後までブレてなかった。が、次々に増えていく登場人物や思わせぶりに出てくる謎等々、シリーズが比較的長期間で続いていたせいか(記憶が薄れていて)読んでて把握できてなかったこともしばしば。加えて最初期こそはオリヴァントを追うという目的があったものの、旅が進むに連れ次第に目的が変化していって―正直物語の落とし所が不安になった頃もありました。
けど、最終巻を読み終わって安心した!今までの登場人物のほぼ全ての出てきた理由をしっかり物語に関与させつつ、多少のサプライズを加えながら残された謎にもすっきり決着がついている。シリーズ初期の巻の帯で「心よ届け。弾丸のように」という台詞が入ってた帯があった。いい台詞で、確かに当時の物語をよく現していた一文だとも記憶しているが、言わんとしていることが『銃姫』の正体と絡めて物語の本質に近い部分にあったということが、とても気持ちよく感じた。1巻から今までしっかり目標を見定めて書ききってくれて、読者としても良かったなぁと思うが、作者としても幸せだったのではなかろうか。
まずは長期間に渡って(出産もあった!)このシリーズを続けてきた作者に当然「お疲れ様」と。続けて、きっちり決着をつけてくれて「ありがとう」、と声を大にして言いたい。当時のMF文庫と今のMF文庫の雰囲気を見るに、かなり変化している所もあるので、このまま同じレーベルで同系統の新作ってのは厳しそうな気もしないでもないが…またなんか出るといいな。


そして、「おめでとうエル姉。継続は力なり」 このシリーズの正ヒロインはアンブローシアかもしれないが、真ヒロインはエル姉だったよ!

4840131325銃姫 11 (MF文庫 J た) (MF文庫J)
エナミカツミ
メディアファクトリー 2009-12-22