「耳刈ネルリと十一人の一年十一組」

「真理!便利!ネルリ!」


あらすじ

『大ネルリの節句』を経験することによって『大ネルリ未来記』を継承したネルリは、未来記の記述に基づき周りに起こる出来事を次々にいい当てていく。半ばこじつけだが、不思議に当たっていくネルリの予言が学内でも噂になった頃、当のネルリは自らの死を予言した。冬を迎えた極寒の八高で、十一組のメンバーはネルリのを守りきれるのか?そしてレイチは自らの思いを打ち明けることができるのだろうか―


『十一組』はよかったのだけど

『ネルリスト』という熱狂的なファンを生み出した一部で話題の作品もこれにて終了。丁度、1年前に始まって、1年きっかりで終わるのは区切りがいいというかなんというのか…
前巻である『奪われた七人の花婿』が余りにも完成度高かったので、あれだけの物を書いておいて次で失速してしまわないだろうか(しかも最終巻!)と心配だったが案の定。個人的には前巻程には満足できなかった。期待値が高すぎたか。
最後の『十一組』の件(くだり)はとてもとてもよかったと思うので…それまでの『大ネルリ未来記』関連の四方山噺が問題だったのだろう。まず、真相が必要以上に軽かった。今までの話は、どれだけ十一組の面子が馬鹿な行動をしてても、背後で動いている「それなりに重い問題」と結末において絡みあい→大団円という流れがあって、レイチらの言動と現実のギャップが魅力的だったのだけど、今回のお話の顛末はそれを考慮しても軽すぎる。そして内容は置いておいて、その真相が最終章である『十一組』に関連してればまだ良かったのだろうけど…今回の最終章は時間がばっさり開いてしまって本当にエピローグ的扱いなのでそちらも期待できなかった。ので1冊の本として見ると、盛り上がりに欠けたかなぁ、と。
ただ、最初にも書いたが『十一組』はエピローグとしてとてもとてもよいものでした。妄想癖や馬鹿な言動は一切無しで、ある意味「いい大人」になった十一組の面々。子供ができたり、学生時代とは立場がえらく変わった人もいる。けど本質は何も変わってなくて。昔とは変わってしまった、という切なさと、そこから透けて見える楽しかった学生時代の思い出がエピローグとして〆にいい味を出していたと思います。


御入学万歳〜が癖になり、七人の花婿〜で驚愕し、十一組〜で終わってしまったこのシリーズ。妄想が多すぎて読みにくいやら何やらありましたが、何だかんだ言って大量に出版されるようになったラノベの中でも、埋もれることのない存在感を保っていたこのシリーズにリアルタイムで出会えてよかった、とは断言できる。作者は素質あるよ!よ!ファミ通文庫だからってこれで消えないで、是非とも次回作を…(まぁ、他のレーベルでもいいのだけどw)

4047261963耳刈ネルリと十一人の一年十一組 (ファミ通文庫)
うき
エンターブレイン 2009-12-26