「ゼーガペイン 忘却の女王」
『人間なんてみんなゴミ屑以下だ。互いが互いからちょろまかすためだけに生きてるようなもんさ。おまえは人の優しさしか見てきてないようだから教えてやろう。おまえの、そういうところ、見ていて虫唾が走るんだよ』
「そういう……ものなのかな?」
「違うと思う」
「え……あ……そ、そうかい?」
「ええ」
「善意だけを信じるのがいけないなら、悪意だけしか見ないのも同じくらいいけないことだと思う」
あらすじ
オルム・ウイルスなる未知の病原体によって、人類をかつてない災厄が襲ったのはおよそ40年前のことだった。だが、人類は自らのデータを量子コンピュータのサーバー内にデータとして保存―幻体化することにより辛うじて滅亡の危機から免れることに成功する。辺境で朽ちてゆく寸前の量子コンピューターが発見された。その活動限界寸前のサーバー内から一人の幻体が救出される。ハヤテ・クロウ、彼は以前の記憶も定かではなく覚えているのは自らの名前だけであった。その後彼は偶然、ガルズオルムと呼ばれる人類の敵との戦闘において、ホロニックローダーを扱えるガンナーという才能を発現させる。初戦ながら善戦したクロウではあるが、敵の罠にかかり味方からはぐれて遭難してしまう。味方と連絡をとる手段も無く幻体を維持するエネルギーも尽きようとしていた。が、彼の期待が墜落したクレパスには所属不明のサーバーが遺されていた。最後の手段としてそのサーバー内に自らを転送したクロウ。彼はそのサーバー内で不思議な一人の少女と遭遇するが―
早足が過ぎたかなぁ…
テレビ東京系列でやってた名作SFアニメのノベライズ。小説オリジナルのサイドストーリーらしいが、本編に関係無い…こともない。終わったの結構最近だった気もするが、もう3年近くも経つのだね…いまだにHDレコ内にデータが残っております。決して面白くなかったわけではないのだけど、小説単体として見ると期待していた程ではなかったというか…普通な感じ。本編の余韻にもう少し浸りたいとか、周辺事情を補完したいという目的ならば期待には応えていたと思う。
アニメがオケアノス級旗艦オケアノス、ゲームが戦闘艦ドヴァールカーをメイン舞台にしていたのに引き続き、補給任務メインのルヴェンゾリという艦を中心にお話は進む。ただ、時期的にはアニメと一緒か近い時期とはいえ、艦のクルーの配置が異なっていたりと微妙にパラレルワールドの設定が入っていたようだ。主人公のクロウが記憶を失っているという設定+ヒロインのレジーナも完全新規キャラでそういう点においては既にアニメを見終えた人には新しく、完全新規の人にも導入が易しいのは良かったのかもしれない。
が、メインの筋のお話がクロウとレジーナの間だけでほぼ完結しているのが物足りなく感じた。一応クロウの所属艦はルヴェンゾリなのだけど、クロウとレジーナは他とは違う出自のせいか隔離されたり単独行動が多く他のクルーとの絡みが足りない。三角関係やら他のガンナーとの関係やら一般人との交友やらそういうのがあってこそのゼーガだったと思うのでその辺りは本編と比較して、多少残念に思ったかも。加えて、ちょっとレジーナのスペックが優秀過ぎるというかなんというか…危機的状況も結局単体で解決してるし。
ちょっと時系列が混乱しているものの一応ジフェイタス戦まで消化してしまっているので、なんというか…早足が過ぎたかな、と。終盤まで話を進めることでナーガの目的やら、アンチゼーガ出現に際しての諸々とか平行世界の存在とか本編であまり大きく扱えなかった所にフォローできてるのは素敵だったので、1冊じゃなくて何冊かで総量が増えればもっとよくなったんではないかと思った次第。
あと、あとがきが良くも悪くも凄い。単なるあとがきじゃなくてスタッフが本音で語り合っている感じ。ちょっと伊藤さんは悪ノリが過ぎた気もするが…
一応計画完遂らしいので新作とかは…期待できないかな。でも折角の初HD制作なのだからブルーレイは是非だして欲しいと思う。もし出たら速攻で買うよ!よ!(DVDはレコのが遥かに画質いいので手を出せない…)
■感想リンク■
- むいむい星人の寝言 様
- 適当でいこう。様
- きざみ納豆 様
- 3日坊主のメイドさん 様
ゼーガペイン 忘却の女王 (朝日ノベルズ) 幡池 裕行 朝日新聞出版 2009-06-19 |