長谷敏司

「天になき星々の群れ-フリーダの世界」

「君は、眼鏡をかけていると、やさしい顔になるんだね。アリスといると、もう一段、表情がやわらかくなる」 「……バカバカしいわ。私は、あなたが見たとおりの幽霊よ」 「だったら、君は、やさしくなったのさ」 「……やわらかくなったんじゃないわ。ただ、腐っ…

「円環少女(8)裏切りの天秤」

「鴉木さん、なんか今日は、変だよね」 「……そう?」 「鴉木さんって、もっと、あとさき考えな……いや、思い切りよかったよ。らしくないって言うか……もっと、ハダカになってぶつかっていいんじゃないかな」 「……………私、ひょっとして『ハダカ』って言った?」 …

「円環少女(7)夢のように、夜明けのように」

「あのっ……えっ……えーと、鴉木さんも一緒にしばる?」 「なんで、あたしが、あんたといっしょに、せんせを縛るの?」 「なんでかな……友だちだから?」 「な?ナニ考えてるの、この変態!せんせをしばってどうするつもりだったの?あんた友だちなんて言って、…

「円環少女(6)太陽がくだけるとき」

「先生は、自分が人生墜落中だって気づいていますか?」 あらすじテロリストの凶弾に倒れたメイゼル。仁は彼女の命と引き換えに《協会》の走狗となり、地下都市の殲滅に向かう。 だがそれは仁が《公館》に反旗を翻すことを意味していた。仁を罰するべく差向…

「円環少女(5)魔導師たちの迷宮」

「……今日は、あんたの、恥ずかしい写真の撮影会をしようと思うの」 「なに突然言い出すんですか!」 「どうして自分のいやらしさって、ひとりじゃわからないのかしら。名前も顔も知らない男の人のにおいをそんなに体にすりこんで、あんた一体どうなりたいの…

「円環少女(4)よるべなき鉄槌 」

「せんせ、これは何?」 「何って、教育書だけど」 「あたしのことを知りたかったら、本を読むより、お話したりベタベタしたりするの」 「ベタベタはまずいだろ」 「こんな本で満足しようとするなんて、恥ずかしくないの?なに?『思春期の子どもとの付き合…

「戦略拠点32098 楽園」

―マリアにとっては、全ては夢なのかもしれない。 昨日の記憶すらも、この星では夢とかわりない。 風になびいてさやさや囁く草原が、急ぎ足に空を流れる雲がここの法だ。 人の営みに明日を変える力はない。 『円環少女』の長谷敏司のデビュー作にして第6回角…