「若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来」

一つ言えるのは、踏み台になる人間に対し、嘘をつくのはよくないということだ。彼に公平な競争を勝ち抜く機会を与え、そのうえで敗れたのなら、取り分が少なくなってもやむをえない。
だが、「大丈夫、いまはきついけど、将来は楽になるから」と騙してこき使い、人生の折り返し地点を過ぎたあたりで「ああ、自分は騙されたのか」と思い知らせるようなシステムは、一度ぶち壊してしまったほうがマシだろう。

スクラップアンドスクラップ


最早、レールは打ち切りになった
今や、入社3年で3〜4割の若者が会社を辞める時代になった。昨今のIT化により転職自体も容易になった(若い内は)ことも理由として挙げられるだろうが、そもそも"会社を辞める"ことがなければ転職産業自体も成り立たないはずだ。今、この時代にきて若い社員が会社を辞めていく理由はどこにあるのか?『年功序列』と『成果主義』この二つの相反する言葉をベースに現在の日本の勤務形態が抱える問題点を若者の視点から考える。


初版の時点で購入はしていたものの、積んでいたので退職計画開始を機に読んでみた次第。さおだけ屋といい最近買った新書は後から世間でヒットしたのが多いので「俺って先見の明があるんじゃね?」感でちょっと嬉しい。まぁ読んでなければ後から買っても一緒だろうけど。
現場で実際に働いている時に感じる将来への漠然とした不安感。今後の自分の社内での出世(もとい年収の向上)の不明瞭さ。あんがい公では語られる場の少ないこういった問題の根源となる理由について明確に(立場が若者より過ぎる気はするけど)語られているのが良かった。既に年功序列制度は実質先行き崩壊しているものの、それを取り繕うためだけの形だけの年功序列制度に、成果を出せる場が無い成果主義。そりゃー不安にもなりますし、憤りますって。
だが、社会人がこの本を読み終えても結局元となる問題が大き過ぎて自分でできる解決策としては今までどうり『残る』or『辞める』しか残ってないのが現実。一応この本では、自分が本当にやりたい仕事を苦労してでも進むことを推奨している雰囲気だが、前提条件が大手企業、有名大卒(か、それに近い)で中小企業は結構無視されている感があるのでその点では大多数の人には参考にならないような気もする。その辺を考慮すると、いい年した社会人が読んでも不安に苛まれるだけなので、まだいくらでも将来の方向性を変えられる大学生辺りに是非お勧めしたい所ではある。自分は独特な業界(医療)なのであまり参考にならないかもしれないが、一般的な就職活動をする人なら多かれ少なかれ得る物はあるのではないかな。


…人間関係や会社の待遇が話と違っていて辞める人もいるだろうが、この現状において、自分から会社を辞める若者は将来を考慮しているor自分を正しく認識できている点では残る人よりは優秀なのではないだろうか。そうなると会社にとっては皮肉ですね。

4334033709若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
城 繁幸
光文社 2006-09-15