「ストップ☆まりかちゃん!」

「今、頭、ぶつけたみたいだけど」
「え?……うん、だけど、事故だよ!弾みで、つい……!」
「そう。弾みで、ヤっちゃったの」
「何でそこだけカタカナにするのさ!?何かとことん人聞き悪いよ!何もしてないよ!」
「女子を気絶させてどこかへ拉致ろうとしていた男が今更何を」
「違う!それ凄い誤解!僕は気絶してた篠原さんを介抱しようとしてただけで――」
「凶器はクロロホルム?スタンガン?……それとも、ヤギの骨?」
「違うってば!何でそんな拉致監禁なラインナップなのさ。てか、何でいきなり骨?」
「子供の頃、推理小説で読んだの。それ以来、私の中で凶器と言えばヤギの骨」


「どうやって使うのか知らないけど、何もしてないよ僕は」
「うん。まあ最初から見てたけど」
「だったら疑わないでよ!?」


あらすじ

御堂鞠歌16歳。遺伝子を軽く紐解き、プラスミドを読み取ってあらゆる肉を操る生物学のマッドサイエンティスト。彼女は政府公認の天才の一人―『原色』の一色として、年に2回国家に研究成果を提出することによって様々な優遇措置を受けていた。
そんな彼女が創りだす生物はどれもこれも常識外れな代物。訳あって彼女と同居している僕は、いつも真っ先にそれらの生物から様々な被害を被ることになって―


グロい

押絵も可愛らしいし、各話冒頭にネタ元の生物の簡単な紹介等もあったのでもう少しほのぼの路線かと、そんな風に考えていた時期が俺にもありました…。『ファーブル昆虫記』とか『ロン先生の虫眼鏡』まで生真面目じゃなくとも生物の習性をネタにしたラブコメ、みたいな。だが、現実は想像とは異なっていた。グロい、生理的に。生物って色々あるでしょーに何故にヒトデやらハリガネムシやらワラジムシの大群やら、そういった方向に走るかな?しかも、生物の描写が妙に丁寧で生々しいし。生物と書いてナマモノと読む風情。
特に1話のヒトデがきっつい。単なるヒトデならまだしも、女性の姿形をしたヒトデで、それがヒトデの習性に従って捕食活動を試みるのですよぉ…。ヒトデの食事の仕方ってアレだし。真っ二つに割れて中は触手うじゃうじゃで見た目が女性とかもうそれなんてエイリアンorプレデター?って感じです。オチもね、なかなかエグいかも。1話目からフルスロットルだぜ!
…実際に見て怖いのはハリガネムシの大群だとは思うけど。奴らは…半端じゃねぇ。


と、思ったら意外に普通?

1話読んで全編この調子なのか…?と思ったら1話が最高峰で残りはそうでもなかったりしてちょっと安心。
相変わらず生物のチョイスはそっち方向だったり、冷静に考えると怖いことやってるなぁ…と思ったりするけどそれが前面に押し出されることは無く。主要登場人物もしっかりキャラ付けされて、意外に堅実にコメディやってると思います。特に加藤さんは黒長門といった感じで(よく喋るが)掛け合いが実に美味しいですな。主な出番が3話だけなものの、友人の高部も男キャラがわりと蔑ろにされそうな傾向の中で健闘しって個人的に少し好印象。
全体的な雰囲気は…やっぱり『ドクロちゃん』を彷彿とさせるよなぁ。最早ファンタジーの領域にすら到達した超生物学然り、主人公の口調然り。鞠歌の突発的な研究でいつも主人公が被害を被ったりする所とか。あれほどバカ一辺倒でなく、グロ、ちょっといい話、温泉サービス回、ラブコメ、等々バリエーションに富んでる所は差異にして見所だとは思うけど。1話はともかく、「生物」の扱いというか存在意義が全体的に薄いのが気になるかも。


一部グロいけど、最後まで読むと意外に普通。割と面白かった。
劇物のようなネタを使っても纏まったことを評価するのか、それでも普通のコメディの枠に収まってしまったことを残念と思うのか。
どっちかというと自分は後者かなー…、でもグロいのに耐えれれば読んでみてもいいと思うのですよ。滅多にないテーマだと思うし。

4840241503ストップ☆まりかちゃん! (電撃文庫 す 10-1)
菅沼 誠也
メディアワークス 2008-01-10