「アカイロ/ロマンス6 舞いて散れ、宵の枯葉」

――世界を歪ませているのは憎しみや恨みなんかではないね。
他ならない自分が口にしたことだ。その持論は今でも揺るがない。
そう。自分が神楽に対して負の感情を抱いたところで、なにかが変わるはずもないのだ。
世界を変えられるのは、歪ませるのは、ただ愛のみ。


あらすじ

全ての真実は明らかになった。
枯葉の姉・木春は一族殺しの宝刀『つうれん』を用い、一族全員の命と引き換えに自らの病を癒そうとしている。反抗か、死か。二者択一の中、鈴鹿の一族の存亡を欠けた最後の闘いは静かに幕をあけようとしていた。秋津依紗子に心を縛られてしまった景介と、木春により絶望を突きつけられた枯葉。二人が選ぶのは永遠の断絶か、それとも再起なのか―


最後までブレなかった

前巻が今までの伏線を片っ端から回収、かつ主人公をドン底の状態に叩き落とした所で終わっていたこのシリーズもついに最終巻。あの状況から納得できる決着をつけるまでに残り1巻は少な過ぎるようにも感じていましたが、いざ終わってみれば納得のできる結末でした。これより短かいならどこかに不都合が生じるだろうし、(ストーリーの展開自体を)これより長くしても逆に冗長に感じるだけのように思えます。
ただ、最終巻にしては全体的に少し地味だったかも。順当に結末へと物語が進行していったために、怒涛の展開で、しかも依紗子さんが最後にはっちゃけてた前巻と比べると、インパクトという点では薄かったように思える。特に景介の復活の件は…落ち込んでいる状況から→奮起までがスムーズ過ぎて軽く感じたかも。この局面で切るカードとしては「あれ」以上の物はなかったにせよ、完全復帰までにはもっと紆余曲折あってもよかったのではないかなぁ。
けど、不満があったのはそのくらいで、あとはシリーズを締めくくる最終巻としては万全の体制だった。あとがきによると、今作のテーマは『愛』『恋』『好きという気持ち』辺りらしいですが、物語の最初っから最後まで、登場人物達の言動の隅々にそれを意識していた展開があってシリーズを通してブレていなかった。景介と枯葉と木春の関係もそうですが、それ以上に発端であった灰原の想いを最後まで尊重してくれたこと、主役格以外の鈴鹿の人達にもそれぞれの『愛』の形があったこと、それをきっちりと描ききってくれたことは素晴らしいと思います。
読み始めの頃はもっと学園異能物として風呂敷を広げていくのかなぁ…と予想してましたが、結局は鈴鹿一族の中だけのお話として収束。でもこのくらいの規模のお話だからこそ、これ程登場人物一人一人にそれぞれの決着をつけれたのだと考えると、あくまで鈴鹿一族の中だけにこだわって完結したというのはいい制限だったとも思える。長さも決して短くはなく、かといって最初から読むのを辛いと思える程の長さでもなく丁度良いのかもしれない。とにかく、シリーズ完結お疲れ様でした。


そしてこのシリーズは『あかろま』とか出るんですかねぇ…もし出るなら供子中心に『このはな』の日常でもr

4048682008アカイロ/ロマンス〈6〉舞いて散れ、宵の枯葉 (電撃文庫)
椋本 夏夜
アスキーメディアワークス 2009-12-10